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お目当ての本を手に取った亮平は何かないかな〜とその周辺を見渡し始めた。
そんな彼の横で私はパッと目に入ったある本を手に取る。特に理由はないのだけど、表紙の感じとタイトルが気になって。
「…それ、気になる？」
「へっ？」
帯の謳い文句を読んだりパラパラとめくってみたり。そんな事をしていると亮平が顔を覗き込んできて。
「俺もね、ちょっと気になってたの」
同じものを手に取って私と同じようにパラパラとめくる。
「Aが気になるならきっと面白いんだろうな」
「えぇ？」
「よし、これにしよ」
そして元のお目当ての小説と一緒にして抱える。
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"あ、A！"
"ん？"
"それ、返すやつ？"
"うん、そうだけど…"
"次俺借りる！"
・
「Aはー？なんか買わないの？」
隣にいる彼が、いつのまにか制服だった。
いや、今は私服だけど。
またぶわっと浮かんだ景色、学校の図書館。
「…うん、とりあえずいいかな」
「えぇ？これ買わないの？」
「感想聞かせてよ、それ次第で買うかも」
「その時は貸したげるよ、多分すぐ読んじゃうしね？」
買ってくるねとレジに向かった背中はあの頃より少し大きい気がする。そういえば、借りた本を返すとか新しい本を借りにいくとか…図書室に行くとよく亮平を見かけてたかもしれない。
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"え、もしかして待ってた？ごめんね、私ゆっくり読んじゃって"
"ううん、なんて本？"
"え？知らないの？"
"Aが読んでるなら面白いのかなーって。外れないんだよ、Aの選ぶの。センスある"
・
返す手続きをした本を彼に渡せば、ワクワクした目でその表紙を見つめていた。そんな思い出…あったっけ。
「お待たせ」
「あぁ、ううん」
「なんか店員さんがね、これ面白いですよーって。さすが編集者さん、目は確かだね？」
「いや、私漫画だし…」
あったかもしれない。
「よし、行こっか。お腹へったー」
「あっ、亮平傘！」
そのまま出ようとした彼に焦って出口の横に立て掛けてあった傘を取るとあっ、という顔をして振り返る彼と目が合う。
「Aいなかったら完全に忘れてた」
ありがと、と言って傘を受け取る亮平が笑う。
「あー、雨止んだんだ」
「降ってなかったらそのまま行きたくなるやん」
「亮平が忘れんぼなだけだと思う」
「あは、バレました？」
意外と忘れ物多かったよなぁ、昔から。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
