初めての瞬間 ページ26
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「え、付き合ってないの…？」
「逆に何で付き合ってると思われてたのか…」
やっと予定が合って卒業ぶりに顔を合わせたなっちゃんは目を丸くしていた。高校の時から表情が豊かだったけどそれは健在らしい。
「だって休みの日に2人だよ？」
以前亮平が康二くんに電話をかけた流れで今に至る訳だけど。なぜかなっちゃんは私と亮平が付き合ってると思っていたらしい。
「いや…たまたま同じタイミングで実家の方にいただけだよ…」
いや、あの日は予定を合わせたのだけど。
何となくそう誤魔化した。
「なんだぁ」
「仮に付き合ってたとしたら康二くんには伝わるんじゃない？」
「いくら彼女だからって許可なしに友達の恋愛事情言わないよ、康二そういう人だから」
「……いやごめん、そういうつもりじゃ」
「あはは！ううん！まぁでも阿部くんと康二の仲なら報告はしそうだしねぇ」
明るくて可愛らしくて。あの頃と比べて間違いなく大人になったけど根は変わらない。そんな彼女みたいになれたらどれだけいいだろうなぁと。
「じゃあ今は付き合ってる人とかはいないんだ？」
「そうだね」
「でも会社の人とか？誰かしらには好かれてそうだけどね！やっぱAちゃん可愛いもん」
「そんなことないって、恋愛なんてもう縁遠い世界だよ」
何を持って可愛いと言ってくれているのだろうか。
中々自分では受け入れられないその言葉、ただ彼女が嘘をついているようには見えないから申し訳なくなる。
「好きな人もいない感じ？」
「そうだねぇ」
「そっかぁ、まぁ無理やりつくるものでもないしね。お仕事何してるんだっけ？」
可愛らしく笑って飲み物を飲んだ彼女。これ以上変に掘らない感じも彼女の性格の良さなんだと思う。
「漫画の編集者、出版社で働いてる」
「へぇ！漫画作ってるってこと？」
「うん」
「すごいね、素敵」
そんな彼女は接客業らしい。明るくて人当たりがいい彼女らしいなと思う。
「どんな漫画作ってるの？」
「少女漫画、なんからしくないよね」
さっき恋愛とは縁遠いと言った人が少女漫画を作ってるだなんて。改めて口にした事でその事実のおかしさに気がついて苦笑いだ。
「そんなことないって、なんていうか夢を作る仕事じゃない？」
ただ彼女はそんな私を前にまたにっこりと笑っていう。
「夢…？」
「女の子の憧れっていうか。子供の頃よく読んでたけど、たまに今まで読みたくなるもんね〜」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
