彼女の頭の中 ページ25
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「でも3人とか2人で行ってる訳ではないんですよね？しかも浴衣でも無いし」
「そうね、しいちゃんが実家帰るついでにふらーっと寄ってみた的な」
少女漫画×夏祭りなんてキュンの宝庫だろうけど、この物語ではあえてそれを避けている。昔はよく行っていた地元の夏祭りに詩香が久々に、しかも1人で行く様子が描かれている。
「小さい頃は3人で行ってたんだよ。人多いから手繋いでてね〜とかママに言われてさ？かーわいー」
「よくあるパターンだと、大きくなってからも毎年行ってるからって彼女がいようとも主人公と祭りは行くみたいな、それで主人公は逆に悲しくなっちゃう的な」
「分かるぅあるよねぇ、彼女いるのにいいの？いやだってお前じゃん、みたいなね」
幼馴染設定の漫画においてこれはかなりあるあるな気がする。ただ正直現実だとあり得ないと思う。彼女彼氏がいるならその子と行くだろうし、いないとしても同性の友達と行くようになるだろう。
「この3人はそのパターンじゃない、だからリアルな感じ出ると思うよ」
「めっちゃリアルです」
1人で屋台の並ぶ素朴なお祭りを歩く詩香は、幼少期に親に連れられて3人で来てたこと、中高生になって友人と来てたこととそれぞれを思い出していた。
それぞれお面を頭に付けて、手を繋いで。大きいわたあめを3人で食べたり並んで座って花火を見ていたり。
女友達と浴衣で集まって、そして都和と陽斗がそれぞれの友人といるところを見かけたり。
そしてふと前を歩く浴衣姿のカップルが目に入る。
手を繋ぎ、2人とも浴衣で。幸せそうに笑い合う姿を見て詩香はどこか遠い目をするのだった。
「……詩香、何を考えてるんですかね」
「それは読者のご想像に今のところおまかせー」
描かれているのは詩歌の何とも言えない表情だけ。
セリフも、回想も何もない。
「安直な考えですけど、2人の事ですかね」
佐久間さんは含み笑いをするだけだった。
「……佐久間さん的に詩香はもうどちらかに惹かれてるんですか？」
「んーどうだろうねぇ、2人からは何かしら感じてるだろうけど…まぁそれに少し戸惑ってる段階かもね」
「戸惑ってる…ですか」
ドキリと胸が鳴った気がした。
やっぱり、詩香のモデルは私でしかないのかもしれない。
最近の自分の心の内がそのまま詩香に現れてる気がして怖くなる。
「……そりゃ、戸惑いますよね」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
