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「危ないよ」
「うわっ」
サーっと自転車が横切っていった。どこかぼーっとしていた私は自身の身体がグイッと寄せられて意識を戻す。
「…ごめん、ありがとう」
「酔ってる？」
「え…酔ってないつもり」
「ふふ、そっか」
肩に回された手がポンポンと2回優しく叩いて離れた。それで私は今、亮平に身体を引き寄せられたのだと気づく。
ご飯を食べて周辺をゆっくり歩いていた。お店があったのはちょっとした複合施設の中、都会の中にあるその空間はただの敷地内にしては無駄におしゃれなスポットが多い。
「落ち着かないよねぇ」
「え？」
「なんか、オシャレすぎて」
何を言う、溶け込んでるくせに。
「それ言われると私の場違い感凄いんだけど…」
「えー何言ってんの、めちゃくちゃ溶け込んでるよ」
彼に対して心の中で思ったことをほぼそのまま言われた。ちょっと顔を顰めるとそんな私を見ておかしそうに笑った亮平は、ここ綺麗ってまた無駄におしゃれな空間にあるベンチに腰掛けた。
「少なくとも私はこんなオシャレな場所行けないしそもそも知らないですー」
「俺だって初めてだよ、Aとじゃないと来れないからね？」
いい感じに植えられた木々や植物、そして効果的なライトアップ。ただの施設内の通り道なのに綺麗なその景色を亮平はパシャリと写真に収めた。
「俺はいろんなとこにAを連れ回すつもりだから」
「え…私連れ回されるの…」
「2人なら怖くなーい」
「ねぇ、それ公園行く時と同じ口実」
「ふふ、じゃあ次はお化け屋敷とかどう？」
「バカ」
やだ！むり！！って折れるんじゃないかくらいにぎゅーっと亮平の腕を掴んで、近所の夜の公園に行ったあの時。確かに優しい、けど彼は急に鬼になる。
「今のお化け屋敷って最新技術がすごいんだってよ？気になるんだけどさぁ、さすがにいい歳した男が1人で行くのは違うじゃん」
「行かないよ！？」
「えー行かないの？」
どうしよう、ご飯行こうって言われてついて行った先がお化け屋敷だったら。
「俺にくっついとけば？目つぶってても引っ張ってあげるよ」
「じゃあ私行かなくてもいいじゃん」
「ぎゃーぎゃー言う人を見て楽しむのもお化け屋敷の醍醐味じゃん？」
「鬼」
「人聞き悪いなぁ」
あははって笑って携帯を前に差し出した亮平。その画面には私達が写っていた。はいチーズ、と声をかけられたらもうピースをしてしまうのは条件反射だ。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
