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「あれから何もない？大丈夫？」
約束の通りごちそうするよと連れてこられたお店はまたオシャレな所で。亮平の都合で夕方集合だったのでお昼ではなくしっかり夕飯。
「うん、いつも通り」
「そっか、よかった」
辰哉も亮平も一番はこの前の事を心配するんだな。ありがたさと心配をかけてしまった申し訳なさがせめぎ合う。今思えば2人の前で号泣してしまったのがかなり恥ずかしい。
「…みっともないとこ見せてごめんね」
「何言ってんの、あの時も言ったけど俺はちゃんとAが全部打ち明けてくれて安心したし嬉しかったよ。昔からの仲なんだから力になりたいのは当然でしょ？」
でもそんなことをサラッと言ってのける亮平。
優しさの塊だ。
「……優しいね」
ほぼ無意識でそんな言葉が出た。
「Aだからね」
「ん？」
「Aにはいつも優しいよ？俺」
ニコニコしながらそう言って、はい乾杯って運ばれてきた飲み物を前に出した亮平。控えめにカチンとグラスを合わせるとまた目を細めてニコッと笑う。
「そう、だね」
「うん」
確かに亮平はいつも優しい。
私に。
ただ、みんなに優しい。
色んな意味で。期待をさせない、という意味でも。
「……なんで優しいの？」
あぁ、"彼"と重なってしまう自分の脳が怖い。
「えー、優しくするのに理由いる？」
「…いらない、か」
「Aだって何か理由があるから俺に優しくしてくれてるわけじゃないでしょ？」
優しくできてる自覚もないけど
強いて言うなら"幼馴染"だからなのだろう。
ただ、別に幼馴染だから違うからで優しく接する基準にはならないはずで。
そう考えれば確かに、理由なんてないのかもしれない。
「私、優しいのかな」
「少なくとも俺にはね」
「……じゃあ亮平以外に全く優しくなかったら？」
「んー、絶対そんなことないから想像できないけどそうだとしてもちょっと嬉しいかも」
「嬉しい…？」
優しさを大事にする彼がそんなことを言うから、よく分からなくてグラスにかけた手を一旦戻した。
亮平はずっとニコニコしている。
「だって俺しか感じることができないんでしょ？Aの優しさ」
「……うん、？」
「独り占めでしょ？嬉しいじゃん」
頼んだ料理が運ばれてきた。美味しそー！と目を輝かせる亮平に、その言葉の意味は聞けなかった。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
