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そんな佐久間さんのイラストの表紙号。
その原稿を受け取りに、そして次回のネームにも既に手を付けているらしいのでその確認に。
「楽しみですね、表紙」
「ね、本屋さんで並んでるの感動するだろうなぁ」
相変わらずスムーズな進みに感動。私一生佐久間さんの担当でいたい。
「都和と陽斗もかなりグイグイですね」
「少女漫画のキュンが多めになってくるねぇ、やっぱ醍醐味〜」
ここまでくるといよいよ恋愛漫画っぽさが強くなってきた。壁ドンなどのザ・漫画な演出は避けつつ、どこか現実で起こりそうだけどでも普段味わえないようなキュン要素。そのいい塩梅の仕掛けが沢山散りばめられていた。
「学生時代の回想多くなってきてますね」
「そう、最初に言った通り意図的に増やしてるかな。それも愛の力なのかもねっ」
ぱちんと指パッチンでドヤ顔の佐久間さん。
そんな彼の描いた都和と陽斗はそれぞれ詩香にアプローチ合戦だ。
相変わらずさりげなく2人で会う約束をとりつけて、その度にどんどん距離を縮めていく都和。そして電話を毎週かけ続ける陽斗。
完全に好きになってしまったからか、会話の話題として2人ともよく学生時代の事を思い出しては懐かしいよなと詩香に語り掛けるのだ。
そんなこともあったなって。2人の話をきっかけに忘れていたことも事細かく思い出していく詩香。
「幼馴染の恋愛における一番効果的なアプローチって、“俺が一番あなたの事を知ってるよ”って思わせる事だと思っててさ。そうだね、昔から私の事分かってくれてるよね、だから一緒に居て安心するな。みたいな思考にさせると恋愛感情に発展しやすいのかなーって思うんだよねぇ」
「恋愛ってドキドキする相手より安心する相手の方がうまくいくとか長く続くとか言いますもんね」
「そうそう。まぁその上にドキドキが重なるのが理想なんだろうけど」
自分を救ってくれて、そして距離を詰めてくる幼馴染2人に少しずつ今まで抱いていなかった感情を覚えていく詩香。ただやはり“幼馴染”というフィルターはその気持ちをぼやけさせて、中々恋愛感情とはっきり認識をさせてくれない。
“都和とここ、行ってみたいな”
“陽斗、今日は電話かけてこないのかな”
詩香は2人の気持ちにはもちろん気付かず、そして自身が2人に抱く感情に変化が出ている事にも気づきそうで気づかない。でも無意識の行動や思いは、確実に2人を意識しているような雰囲気があった。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年9月2日 23時