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「なんかこう…被害妄想をしてただけなのかもしれないですねぇ」
何となくツナとシャチが“おつかれさま”って言ってくれているような気がする。心なしかいつもより雰囲気がほわんとしてる2匹を撫でながら佐久間さんにそう溢した。
「よく考えれば本当に思っていてもあんなにはっきり聞こえるように悪口言うなんて小学生じゃあるまいし…」
「まぁ、人間ってそういうもんだしね。気になりだしたらどんどんっていうか」
佐久間さんにももちろん会社から謝罪があり、そして私も彼も今まで通り仕事ができるようになった。そして以前うちの部署にいた御陰さんが謹慎になった事実はどうしたってバレるし、私の立場もあるからとうちの部署の社員に限り何が起こったのかとそれが全くの嘘であるという事が伝えられたのだ。
私が色んな方向から視線を感じていたり、はっきりと悪口を聞いていた割には知らなかったという人がほとんどで。私の身を案じて声をかけてくる人が思ったよりも多かった。
ただ私が気にしすぎで自意識過剰になっていただけなのかなとか、幻聴でも聞いていたのかなと冷静に振り返って思ったのだ。
まぁ、知らないフリをして悪口を言っていた事実を隠蔽しようとしているだけかもしれないけれど。
「てかさぁ、あの人もよくやるよねぇ。まぁ俺の筆の早さが分かってなかったのかな！」
そう、そして御陰さんがしたことは噂を流した事だけではなかった。
「会社の廊下で泣きそうになったあの時間返してほしいですよ」
「まぁでも、むしろそれで俺らの評価上がったんじゃん？」
佐久間さんの表紙の依頼の件。
実はわざわざ私のアカウントにログインしてメールフォルダからその連絡メールをゴミ箱に移動させたらしい。私のミスを演出し、さらに噂を流すことでとことん追い詰めるつもりだったんだろう。
それも御陰さん自ら白状したらしいが、編集長からしたらびっくり案件。だって締め切りにちゃんと間に合って上がってきたんだから。
「ギリギリで気づいて対応して頂きましたって言ったら佐久間さんには頭が上がらないって言ってました」
「これからも連載描かせてくれるなら許すー」
「むしろお願いしますだと思いますよ」
そんなこんなで。
色々な事が判明したこの件は一応私たちに不利益が残らず収束した。まぁ、私のメンタルへの不利益は間違いなくあったけど辰哉の言う通りまた頑張ろうの気持ちでいよう。そう私は無理やり気合を入れなおした。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
