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いつも穏やかな亮平がこんなに感情を出している様子が珍しくて少し驚いてしまった。何も言えない私にさらに彼は言葉を続ける。
「確かに最初は愛想悪いなとかとっつきにくいなって思う事もあるかもしれないよ?俺だって初対面の人にそう思うことはあるし。でも話してみるとか関わりを持ってみるとそれが単なる第一印象でしかないってことに気付くのがほとんどだよ。ただ緊張してただけだったんだなって。
それに気づくつもりがないっていうか…理解する気がなかったんだよその人は。そもそも先輩だったら後輩のこと理解しようとするのが普通だと思うんだけどな、自分が接しやすくなるためにも。だからマジで自己中なのその人は、それ以上でも以下でもない」
亮平が私たちの他に普段どう人と関わっているかなんて分からない。
ただ、警戒心が強い一面を持っているならどちらかと言うと私に近い部分もあるのかなと思っていたけど、彼はただ警戒するだけじゃなくてその人の事を分かろうとして、分かった上で判断しているだけなんだと理解した。
「……てかその作家さんもそうだけどさ、Aと深く関わったり仲良くなった人の中でAのこと悪く言う人なんて誰もいないもん。俺からしたらAの事なんも分かってないのに何言ってくれてんのって感じ」
理解して、警戒しなくてもいいって判断した人には
とことん優しくて、とことん寄り添う人だ。
「……まぁ、落ち着こうぜ。2人とも」
少しあいた間の後、辰哉が隣の亮平の肩を軽く叩き、そして私にも優しく目線を向けた。
「まず、誤解解けてよかったじゃん。多少居心地は悪いかもしんないけど…これからも変わらずその人と仕事ができるなら一番いい収束の仕方でしょ?あんま考え過ぎずにさ、よかったーこれからもがんばろーってとりあえずそれでいんだよ。ちょっと肩の力抜いてみよ。な?」
優しい声だった。
その声で私も、そして隣の亮平も少し体の力みを解いた気がした。
「んで、しんどい時は俺らでもいいし誰かに言うこと。信頼できる人にね、分かったっしょ?」
確かに今回の件は亮平と辰哉、そして佐久間さんに打ち明けたことでトントン拍子に解決に至った。
これは間違いなく2人が導いてくれた結果、でもこれからは何かが起こった時に自分が相談したり助けを求める勇気を持たないといけないこともあると体感した出来事だった。
「……うん、ありがとう」
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年9月2日 23時