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「なのに亮平のは出んのかよ！ショックだったんだけど！！」
「まぁまぁ…Aだって心配かけたくなかったんだよね？」
ぷくぅといい歳した大人が頬を膨らませ、そしてそれを見て隣の大人が苦笑いしながら宥める。重かった空気がふっと軽くなった感じがして私もいつの間にか入っていた肩の力が抜けたんだけど…
「そう、ごめんね。ちょっと裏工作みたいなことしちゃったんだけど」
私が一瞬で浮かべた疑問。それを察したのかそのまま亮平が話し出す。
「辰哉からAがやられてるって連絡来てさ。俺なら反応してくれるかもしれないから頼んだーって。まぁそんな連絡が来るくらいだから相当なんだろうなって思ってたけど、会ってみたら思ってる何倍もしんどそうでびっくりした」
「……そんなに？」
「一目瞭然。辰哉から聞いたと思うけど、俺も柏木さんの件の時のAを思い出した。俺たちあの時凄く後悔したから、忘れたくても忘れられない」
2人の中の共通認識。
それは私自身は分かっていないし、そもそも忘れてさえいたことなのだ。
「辛いって、それすらも言えないといつか本当に壊れるよ。あの時は壊れる寸前だったのかもしれないとすら思ってる。だから今Aがちゃんと教えてくれたことに安心してる。もっとない？しんどい事。全部言って？」
亮平が向ける表情は本当に優しい。そして辰哉も。
2人から向けられるものを目の当たりにして、一回落ち着いたはずの感情がぐっと込み上げてくる。それと同時に眼の奥にもどんどん水分が溜まっていく。
「我慢すんな、何もいい事ないよ」
辰哉のその一言で、またぽろりと涙がこぼれた。
「……会社にいると、全ての人の目が突き刺さってるような気がする…みんなが私の悪口言ってるんだろうなとか…普通に話しかけてくる人も影では色々言ってるんだろうなって…仕事しててもいつの間にかそんなことばっか考えちゃう…会社に行くのが怖い……
でも…今の担当作家さん、物凄くいい人で…そんな噂通りの事なんて絶対するような人じゃない。それに才能もあって仕事も早くて…私の事も凄く信頼してくれてるの。だから私はその人の漫画を届けるために頑張りたい…
でもね…その人の漫画の評価が上がれば上がるほど私との変な噂が広まっていくんだと思うし…その人のこれからの作家人生が終わってしまうかもしれない」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
