陰キャとさくまの水曜日 (ページ10)

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「へぇ、やっぱ図面からすごい」

「えっ！？……あ、あぁ！」

学科棟で過去に作った図面を眺めていたらあの阿部ちゃんと呼ばれていた人にパソコンを覗き込まれていた。

急に話しかけられた驚きを落ち着けながらそうだこの人建築なんだった…と驚きを警戒心に変える。

「あべって人……」

「うん、阿部です。笑」

またおかしそうに笑った阿部さんは私の隣に座った。やばいなぁ……関わりたくないなぁと少しだけ横に身を引く。

「ごめんね佐久間が、びっくりしたでしょ」

「さくま…？」

「…え、あいつ名乗ってすらなかったの？」

阿部さんが驚いて、そして呆れるように笑う。いや、確か名乗られたんだけど…あまりにも他の衝撃が強すぎて覚えられてなかった。

「佐久間大介、メディアの2年だよ。あ、俺下の名前亮平。なんかとっさに苗字で呼んでたけどAちゃんでいいよね、同級生だし。俺は阿部ちゃんでも亮平でも何でもどうぞ」

「は、はぁ……」

メディア2年も言ってた気がする。覚える必要もないのだけど心の中ですみませんと謝っておく。そういや年下かと思ったとか言われたな…と少し心の中がムカっとする。

「動画見たけど、凄いね」

「動画？」

「翔太が公式で動画出てたはずって見せてくれたんだよ。高校の時の大会の動画？さすがにどれがAちゃんかは分からなかったけど凄いってことは伝わった」

「あぁ…あれか」

動画が出てるってことはそれこそあの2人の高校と競って勝った大会だ。そのフリは踊ってきた中でもお気に入りで今でもたまに踊ったりする。それこそ、佐久間くん？に話しかけられた水曜日にも踊っていた。

「でも確かに、そんなに凄いのにサークルには入んなかったのね」

「バイト忙しいんで…この学科もそうだけど」

まぁねぇ、と腕を組んで背もたれに体重をかけた彼。同じ学科である彼はそれなりに共感してくれたみたいだ。

「水曜に踊ってる、ってのは？」

「…バイトまでの暇つぶし、水曜体育館空いてるから」

「ふーん。好きなんだね、ダンス」

彼は横目で私を見て笑う。
何だかそれが全てを見透かすようなそんな目に思えてまた少し怖くなった。