陰キャとさくまの水曜日 (ページ7)

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「今日はここまでです。来月の課題に向けてそろそろ構想を固めておくこと」

教授の声を最後まで聞かずに次々と講義室を出ていく人たち。今日最後の授業が終わった、自分も荷物をまとめ始める。

また図面や模型と向き合うのかぁ、バイト入れなくなるなぁ。そう思うと自然とため息が出た。

自分で選んでこの学科に入ったものの、課題は大変なので気が重くなる。

あと単純に稼ぎがなくなる。比較的たくさん働いている方だけど、課題期間はまとまって休むことが多いのでその月は給料がぐっと減るのだ。

席を立って講義室を出る。
さっさと帰って今日は寝ようか。

閉めで夜中まで働く日の翌日はバイトを休みにすることが多い。さすがに社畜の私でも一応大学生なので睡眠時間が無いと授業がしんどいのだ。

「いたー！Aちゃんみっけ！」

「……え」

そんな時、思わず周りの人が振り向くくらいの声量が学科棟に響く。それで自分の名前を叫ばれて、ビクつきながら振り返るとそこにはあの金髪の…

「待って待って逃げないで！」

彼は確かメディア学科だと言っていた、つまり建築棟にいるはずがないのだ。

本物のストーカーだ…

「ストーカー…！」

「だから違うって！建築に友達いるのー！」

反射的に逃げたのだけど思ったよりも距離が近かったのかあっけなく手を掴まれてしまった。

恐る恐る振り返ると肩で息をするストーカー。

「ね、待って。1回サークル見に来てみよ？」

「は？だから…」

「火曜と木曜って言ったでしょ、これからやるから見に来てよ！」

何でそんなに必死なのだろうか。

「い、いいです遠慮しておきます！」

「遠慮なんかしなくていーから」

「してません！！」

そして何でこんなに腕の力が強いのだろうか！

「あれ、さくまー？何してんの」

そんな時、後ろから声が聞こえた。相変わらず強く腕を掴んだままだけどその声に反応したストーカーがぱっと顔を輝かせた。

あべちゃーん！って叫ぶ。でも手は離してくれない。

「阿部ちゃん！この子！サークル入るって！」

「は！？ち、ちが！」

「サークル？」

阿部ちゃん、と呼ばれた人。
確かこの前もその名を聞いた気がした。

その人は不思議そうにストーカーが掴む腕を辿って私の顔を見る。

「……嫌そうだけど」

「違う違う！決して無理やりでは！」

「無理やりって言ってるし」

何だか怖くなって私は顔を俯かせた。