陰キャとさくまの水曜日 (ページ47)

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「おーい、Aちゃーん」

「どしたの、聞こえるかーい」

「！……あ、」

あの2人の声が聞こえてはっとして顔を上げた。
少し不思議そうな顔してる2人が目の前に。客席が埋まってたので、端っこのちょっとした段差に座っていた私の顔を覗き込むようにしゃがんでいる2人。

「大丈夫ー？具合でも悪いの？」

「え、あ、いや…ううん、平気」

「そう？ね、どうだった？俺らのダンス」

いつもの佐久間くんだ。
さっきの別人みたいな表情は一切なくて、ニコニコしている彼はステージの上にいた彼と同一人物なのだろうか。

「あはは、もしかして拍子抜けした？笑」

私の戸惑った様子を見てか揶揄うに言った阿部くん。でも反論はできなかった、まさにそうだもん。この人たちのダンスを見て私はこうなってるんだから。

「……ごめん、あまりにも…衝撃が凄くて」

「…あ、まじのやつ？」

「びっくりしちゃった…別人みたいだった…」

どういう反応していいか分からなくて変に苦笑いしてしまった。一瞬、驚いたような表情をした2人に何だか申し訳ない気持ちになる。なんだかんだでいつも威勢よく反論したりしてるのに、こんな急にしおらしくなったら困るよね。

「ふふ、ありがとう。嬉しいや。俺Aちゃんが見てると思ったら気合入っちゃってさー、変にバク転とかしちゃった。さっき照に怒られたんだよね。笑」

「そうだよお前、急にバク転するからマジで俺びっくりしたんだから！シンメの気持ちも考えてよね、俺が間違ってんのかと思ったわ」

「あっはーごめーん、でもかっこよかったっしょー？」

俯いていた顔を上げて佐久間くんを見ると嬉しそうににっこりと笑っていた。阿部くんと講評後のあの時みたいなちょっと困ったような、でも優しい顔をしてる。

「かっこ、よかったよ2人とも……うん、すごく」

これは認めざるを得ない、本当にやられた。ただの陽キャ集団とか思っててごめん。

もちろん他の人たちも。良く知らないけど多分私が思ってたような人ではないんだと思う。勝手に決めつけて嫌ってた自分がちっぽけに感じる。

どんな顔をしていいか分からなくて黙っているとえーもうほんっとうれしー！！って、急にがばっと抱き着いてきた佐久間くんの勢いにバランスを崩す。

いきなりの事でびっくりしながら倒れた私にはっとして、うわ！ごめん！！大丈夫！？ってあたふたする彼を見て阿部くんがおかしそうに笑った。