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「どうも」
「！？あ、あべくん……」
「そろそろですねぇ、作り始めてる？」
授業開始5分前。いつもの通り講義室の隅っこでぼーっとして待っていたら急に隣に座ってノートやら資料やらを広げ始めてる彼がいた。
「……ここで受けるの？」
「だめ？優秀な人の知恵を盗むのも勉強のうちよ」
「別に…大した事してない」
「俺も、この授業あんま聞いてない」
学科必修ではあるものの、建物の歴史やら建築の歴史と銘打って教授が熱く建築について語り続けるだけのこの授業ははっきり言ってつまらない。
「佐久間にAちゃんとバチバチなんでしょー？って言われたんだけど、そんなつもりある？」
「…別に、競ってるわけではないし」
「あはは、俺は眼中にないか。笑」
「いやそういう訳じゃなくて……」
いつも僅差でって佐久間くんから聞いて過去の講評結果を見直したら確かに私が賞を取ってる時はその次に“阿部亮平”の文字があった。逆に、私が取れなかった時は上にその名前があったり。
2人ともが取れてない回も名前が並んでいたりするから確かに毎回僅差だったんだなって思った。なのに私話したりしてなかったんだ。自分で言うのもなんだけど陰キャ極めてるなぁとその場では苦笑いだったのだけど。
「もうすぐまた課題があるって言ったらなぜか俺らの戦いを楽しみにしてるっぽくて」
「戦いって…」
「ね、どうせなら勝負してみない？」
「は？」
また頬杖をついてこちらをにっこりと見つめる彼は突然そんなことを言う。私はまた不機嫌度マックスな声を出してしまった。
「Aちゃんが勝ったら俺から佐久間にもう付きまとうのやめなって言うよ」
「…負けたら？」
「サークルに入る。俺もAちゃんのダンスちゃんと見てみたいし。どう？いい条件だと思うんだけど」
いや課題に変な条件つけるなよ！
確かにコンペっぽい形式だから毎回賞はあるけれど、そんな競うために作ってるわけじゃない。
第一私と阿部くんが僅差で勝っている確率は本当に五分五分だった。負ける可能性だって大いにあるし、そもそも私達以外にも建築生はたくさんいる。
「いや…別に言わなくていい」
「あ、もしかして普通に入る気になった？」
「入らないです」
「じゃあ勝つ自信ないんだ？」
そんな面倒ごとを増やしたくないと断るとふふっと楽しそうに笑って挑発してきた。煽られている。
「…条件付け足していい？私が勝ったら阿部くんも付きまとわないで」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2021年5月20日 2時
