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おにぎりやらサンドイッチを買って、構内のベンチに座る。まだ肌寒いけれど日が当たる場所ならギリギリじっとしてても平気かな、そんな感じ。
ただやっぱりまだ外でご飯を食べようだなんて思う人は少ないらしく。春真っ盛りの時期にはそれこそプチお花見をする学生で溢れる構内のベンチはほとんどガラガラ。
「春休みなんか予定あるん?」
「んー、まぁどこかしら出かけたいなとは思うけど春休みなんてどこも混むからねぇ」
「せやんな、俺も近場でちょっと遊ぶくらいになりそうや」
「実家帰ったりしないの?」
「帰る帰る!なんかお土産買ってきたろか」
「やったー、楽しみにしてる」
オカンからやって度々電話しているところを見かける。阿部くんから一年の時はホームシックすぎてやばいって口癖のように言ってたよって聞いたことがあった。
この歳の男性にしては何だか珍しいと思う。何だかピュアでちょっと寂しがりやさんで。彼はそんな人。
カシャ
「えぇ、今?」
「光がな、ええ感じなんよ」
何でもない話をしながらぼーっとサンドイッチを食べていただけ。間抜けな顔してるんじゃないかとそんな瞬間を撮られてしまった。
「えー、なんかやだよ消して?」
「何でやねん、嫌や」
「やーだー」
「絶対消さへんー」
カメラを奪おうとしたけど私の非力な片手はひょいっと交わされてしまう。奪うどころかまた不意にカシャっと撮られてしまい。
楽しそうに笑う康二くんに遊ばれる。両手でガシッとカメラを掴んでやりたいけどサンドイッチを落とすわけにはいかないんだから。
「ほら取ってみい」
「もう!」
「あはは!ええ顔しとんな!」
客観的に想像した自分の姿が滑稽で恥ずかしさも相まって笑ってしまう。彼は私の手をすり抜けながらもはやノールックでシャッターを切っている。何だその技術。
「はー、もう疲れたぁ」
最後の一口を入れてベンチの背もたれにのけぞった。さぞかし間抜けな姿が彼のカメラには残されているんだろう。
抵抗するのをやめた私に笑って、写真たちを確認し出した彼。柔らかい日差しが降り注いで、ナチュラルな茶髪がキラキラと光っていた。
「……ええやん」
「え?」
それをぼーっと眺めてしまっていて。そしてぽつりと呟かれた彼の言葉に意識を戻す。
「めっちゃ好き、このA」
画面を見て柔らかく笑ってる彼の姿。
何だか初めて見たような、どこか儚ささえも感じる姿に胸のどこかが鳴った気がした。
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スノウ(プロフ) - いえいえ!全然大丈夫ですよ!そうなんですね!教えてくださりありがとうございます! (3月6日 23時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - スノウさん» スノウ様。ここをに顔を出さない日が続いておりまして、コメントに気づくのが遅くなってしまいすみません💦非公開作品に関しては再公開等は全て未定です。申し訳ないのですがご了承いただければと思います🙇♀️ (3月3日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - このお話には関係ないのですが、見えない世界の恋と魔法ってもう見れないですか?😢💦 (1月23日 0時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» takkimakki様。お読みいただきありがとうございました。春はやはり少し寂しい季節でもありますよね、私もいつか素敵な気持ちで春を迎えたいなぁと思います。素敵な日々が過ごせるように願っております。ありがとうございました(^^) (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。様。お読みいただきありがとうございました。少しお返しが遅れてしまい、もう早いところは散ってる所もあるみたいですね。いい写真は撮れましたでしょうか?素敵な春になるように願っております(^^)ありがとうございました! (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年3月24日 3時