・ ページ44
・
正直戸惑った。
真っすぐにそんなことを聞かれて。
でも、その目線の強さには何か意味があるのかもしれないと思って。
「……知り合いにね、いるの」
「…知り合い?」
「春が嫌いな人が」
名前を出さずに、彼の事を少し話した。
また表情が崩れてしまいそうなのを誤魔化すように歩き出せば再び俺の腕を掴んだ彼女。
そして振り返った俺に
「……私は好きだよ、春」
しっかりとそう言った。
その彼女はどこか腑に落ちた表情をしているようにも見えて。そしてちゃんと春が好きだと伝えてくれた彼女の言葉を聞いて心から安心した。
「……だから、阿部くんの知り合い…春が嫌いな人。誰かもわからないけど…その人が春が来るたびに苦しんでるのならそれは悲しいよ。
私だったら…どうにかして一緒に春を楽しみたいなって、そう思う」
やっぱり、彼女は康二の春を救ってくれる存在なんじゃないかと。俺がこの一年ずっと思っていた思いが強くなる。だから
「康二くんにさ、またおしゃれな写真撮ってもらおう。そしてアイコンにしようよ、きっと綺麗だよ」
彼に桜と写真を撮ってもらおうと、そう笑顔で言った彼女に
「……"その人"の事、少し相談してもいい?」
また、名前を出さずに彼の事を話したのだった。
「春ってさ、出会いと別れの季節なんて言うじゃん」
よく聞く言葉だ。でもこの言葉はどこか前向きに捉えられてしまうというか、別れも踏まえてプラスなんだと悲しみを半ば無視するような言葉だとも思う。
彼みたいに、別れをマイナスとして受け取らざるを得ない人もいるのに。
「……その人、想像だけどさ」
俺の話を聞いて彼女はさっきとは違った切なさを表情に表して。それがなぜなのか俺には分からなかったのだけど
「きっと、みんなのために進んで動くような…凄く素敵な人なんじゃないかな」
知らないはずなのに“その人”を彷彿とさせるような、まるで知っているかのような事を言ったから。
きっと大丈夫だと。いつか“その人”の桜に負けずに笑う姿が見れるはずだと、俺はそう思って。
自然と彼女に向かって笑っていた。嬉しかったのだ、その未来が近づいていると感じられたことが。
451人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スノウ(プロフ) - いえいえ!全然大丈夫ですよ!そうなんですね!教えてくださりありがとうございます! (3月6日 23時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - スノウさん» スノウ様。ここをに顔を出さない日が続いておりまして、コメントに気づくのが遅くなってしまいすみません💦非公開作品に関しては再公開等は全て未定です。申し訳ないのですがご了承いただければと思います🙇♀️ (3月3日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - このお話には関係ないのですが、見えない世界の恋と魔法ってもう見れないですか?😢💦 (1月23日 0時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» takkimakki様。お読みいただきありがとうございました。春はやはり少し寂しい季節でもありますよね、私もいつか素敵な気持ちで春を迎えたいなぁと思います。素敵な日々が過ごせるように願っております。ありがとうございました(^^) (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。様。お読みいただきありがとうございました。少しお返しが遅れてしまい、もう早いところは散ってる所もあるみたいですね。いい写真は撮れましたでしょうか?素敵な春になるように願っております(^^)ありがとうございました! (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年3月24日 3時