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「へ……」
見下ろされて、大きな手で撫でられて。
感じたことのない気持ちになって、なぜか体温が上がっていく気がした。
初めて見た顔だった。
何か愛おしいものを見つめるような、甘くて優しい目線だった。
「A?」
「……へ、あっ…なに?」
なぜかぼーっとしてしまって、名前を呼ばれて意識を戻せばもう頭で感じていた手の感覚は無くなっていた。
「照れてんの?」
そう、少し悪戯に笑う彼が私を覗き込む。
「え、い、いや」
「あはは!お返しや」
「え…?」
「あんま簡単に男にかっこいいとか言ったらあかんよ。ほら、そろそろいこか」
軽く背中をぽんっと叩かれて、そして康二くんは丘を降りていった。はっ、と変な息が盛れて自分が戸惑っている事に気がつく。でも遠くから「何してんねんはよー!」って彼の声が聞こえて、その気持ちを抑えて自分も丘から降りた。
見えた背中がいつもより広く見える。もうなんてことなさそうにカメラをチェックしていた彼に並ぶとその身長の高さを今までよりもダイレクトに感じた。
隣にいる事なんて珍しくないのに。いつも席だって隣なのに。
「またどっかカフェでも入って休憩するかぁ」
「あ…うん」
「お気に入りあんねん、こっち」
本当に、今日は知らない彼が沢山いた。
隣を歩く彼は私の知ってる彼だけど、きっと知ってる事なんてほんの少し。
「ええなぁ」
「ん?」
「なんか、このままのんびりできる時間が続けばいいのになぁと思って」
コーヒを片手に、窓の外の街並みを眺める彼。
「4回生なりたくない、一生3回生の春休みがいい」
彼の眺めるその景色の中。
私はあるものを見つけてしまう。
実際は分からないけれどそれを真っすぐに見つめている気がして
「……学校始まってもできるじゃん」
咲き始めていた桜。ほんの少しだけれど。
「…せやんなぁ」
春が好きな彼を私は知らない。
そんな彼が存在していたかは分からないけれど。
知りたいと思った、春の中で笑う彼を。
「なー」
「ん?」
「あと一年したら会えんくなるやん?」
「え?」
「きっと連絡も取らんくなるんよ、卒業って寂しいな」
どうすれば知ることが出来るんだろうか。
「…そんなこと言わないでよ、卒業しても連絡できるし会えるよ?」
その、切なくて辛そうな笑顔じゃなくて。
写真を見て楽しそうに笑うようなあの笑顔を。
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スノウ(プロフ) - いえいえ!全然大丈夫ですよ!そうなんですね!教えてくださりありがとうございます! (3月6日 23時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - スノウさん» スノウ様。ここをに顔を出さない日が続いておりまして、コメントに気づくのが遅くなってしまいすみません💦非公開作品に関しては再公開等は全て未定です。申し訳ないのですがご了承いただければと思います🙇♀️ (3月3日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - このお話には関係ないのですが、見えない世界の恋と魔法ってもう見れないですか?😢💦 (1月23日 0時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» takkimakki様。お読みいただきありがとうございました。春はやはり少し寂しい季節でもありますよね、私もいつか素敵な気持ちで春を迎えたいなぁと思います。素敵な日々が過ごせるように願っております。ありがとうございました(^^) (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。様。お読みいただきありがとうございました。少しお返しが遅れてしまい、もう早いところは散ってる所もあるみたいですね。いい写真は撮れましたでしょうか?素敵な春になるように願っております(^^)ありがとうございました! (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年3月24日 3時