梅の花の知らせ ページ14
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「アイス食べたいなぁ」
関西仕込みのたこ焼きをたくさん食べて、少し落ち着いた時につぶやいた阿部くんの一言で始まったのはじゃんけん大会。
「あ、負けた」
負けた人がコンビニにおつかい。よくあるノリ。
「一番近いコンビニってどこだろ、通ってきたあそこかな」
玄関前で軽い上着を羽織って、靴を履きながら携帯でマップを開くと誰かに肩を叩かれる。
「あれ?どしたの」
「俺もいく」
「えぇ、いいのに」
「一人やと寂しいやろ?」
そう笑った康二くんは玄関を開けた。
場所を貸してもらってるからと彼はさっきのじゃんけんを免除されていたはずなのに。
日が傾いてもうほとんど見えていない。薄暗い中でコンビニまでの少しの道を歩く。
「夜でも寒くなくなってきたね」
「せやなぁ、こないだまでダウン着てたと思たら」
彼はパーカーを羽織っている。
上着を着てきたけど着ているニットだけでも大丈夫かもしれない。
春休みもあと半分くらい。確実に春はすぐそこに。
「……梅の花」
通りかかった小さな公園に小さくて可愛らしい花が咲く木を見つけた。きっと散りかけていて、あたりには花びらが。
これが全て散る頃にはきっと桜が咲いている。
「春だねぇ」
思わず公園に足を踏み入れた私。
康二くんも梅の花を見ながらゆっくりと着いてきた。
「……せやんな」
「楽しみだな、学校の桜」
ね、って。康二くんに振り向けば、彼はいつかのようにぼーっと梅の花を見つめていて。
「…春、ちょっと苦手なんよなぁ」
どこか上の空でそう呟いた。
「え…?」
あの、入学式の写真の彼みたいだった。
「あっ…いや、俺花粉症やからさ!もうちょっと来てんねん、毎年辛いんよー」
少しの沈黙の後、ハッとして焦るようにそう捲し立てた康二くん。わざとらしく鼻をかいて困ったように笑った。
「あぁ、みんな待っとるで?早よ買いに行こ」
そして梅の花を背に歩き出した康二くん。
私は何も言えず、ただそれについていった。
誤魔化したのなんてバレバレで、
彼のパソコンに春の写真が無かったのもそういうことなのか。
2年前、桜の写真を撮らなかったのもそうなのか。
彼は、春が嫌いなのかもしれない。
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スノウ(プロフ) - いえいえ!全然大丈夫ですよ!そうなんですね!教えてくださりありがとうございます! (3月6日 23時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - スノウさん» スノウ様。ここをに顔を出さない日が続いておりまして、コメントに気づくのが遅くなってしまいすみません💦非公開作品に関しては再公開等は全て未定です。申し訳ないのですがご了承いただければと思います🙇♀️ (3月3日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - このお話には関係ないのですが、見えない世界の恋と魔法ってもう見れないですか?😢💦 (1月23日 0時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» takkimakki様。お読みいただきありがとうございました。春はやはり少し寂しい季節でもありますよね、私もいつか素敵な気持ちで春を迎えたいなぁと思います。素敵な日々が過ごせるように願っております。ありがとうございました(^^) (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。様。お読みいただきありがとうございました。少しお返しが遅れてしまい、もう早いところは散ってる所もあるみたいですね。いい写真は撮れましたでしょうか?素敵な春になるように願っております(^^)ありがとうございました! (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年3月24日 3時