昔と一緒 ページ26
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「それなぁに」
「クッキー」
「おいしい？」
「うん」
「よかったねぇ」
またあのおじさんかな。美味しいクッキーが工場に置いてあったので遠慮なく頂いていた。
作業に没頭してる兄と康二は私がここにいる事に気づいていない。声をかけなければ気づかれずにずっとここにいて、この美味しいクッキーを全て食べてしまうことだって可能なのだ。
「えぇ、なんかおるし」
「これ美味しいね、またあのおじさん？」
「それ俺らに差し入れなんやぞ」
…と言う場合もあるというだけで、休憩だとこちらを振り向いた時には気付かれる他ない。
煤だらけの顔をまた煤だらけの手袋で拭う。
あーあ、真っ黒。
「大丈夫なん？」
「うん」
「飯食うた？」
「うん」
クッキーの隣に置いていたペットボトルのお茶をぐいっと飲んだ康二。手袋をとって軽く手を洗い、クッキーにも手をつけ始める。
「うま、なんやこれ」
「ね」
お高いのかなぁ。いつもよりちょっとレベルが高い味。
「てるにー！これなんかめちゃうまいで」
康二と反対側でずっと作業してた兄は未だに私がいることにも気づいていないだろう。康二の呼びかけに反応して顔を出した兄は私を見てびっくり。
「お前、こんな煤だらけのこといていいの」
「今に始まったことじゃないじゃん」
「飯食って薬飲んだ？」
「うん」
もぐもぐとクッキーを食べる私と康二を交互に見て兄は苦笑いを溢す。
「なんかお前ら小動物みたい」
「Aは分かるけど俺そんな小さない」
「私は分かるけどはおかしい」
「俺からしたら2人ともちっこいっつーの」
「照兄がデカいだけや」
そんなこと言って美味しそうにクッキーを頬張り出す姿はこの中で一番小動物っぽい気がするデカい兄。
「これって昨日の設計図のやつ？」
「そ」
そんな兄がモグモグする背後にはまだ骨組みと少しの内部だけ組まれた物体が。私の問いに昨日リビングで見ていた設計図を広げて見せた。
「この間乗せたのよりちょっと小さめ」
「ふぅん」
「けど性能はあれより高いもんになる予定なんよ」
兄が持つ設計図を見て得意げに言った康二。
昨日よりも書き込みが増えている気がした。
そういえば、製作中の飛行船をちゃんと見たことはないかもしれない。私はクッキーを飲み込んでから立ち上がり、先程康二が作業していた場所にしゃがみ込んだ。
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ぽぷら(プロフ) - kokoaさん» kokoa様。コメントありがとうございます(^^)お返し遅れてすみません…楽しんでいただけてこちらも嬉しいです。移行先の4章でも佳境に入っていますので、引き続きよろしくお願いします！ (2023年1月8日 19時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
kokoa(プロフ) - 何様なんだって言われそうですけど、構成も言葉選びも表現力も全部大好きです。ここ数日すごく忙しかったのですが、その合間を縫ってでも読み進めたいほど素敵な作品で、後半は涙が止まりませんでした。この後も楽しみにしています！ (2023年1月1日 22時) (レス) id: 5cf1c692fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月17日 22時
