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「うわっ」
もう少しでタケノコなのに。急にぐんっと腕を引っ張られたと思ったらサクマが立ち止まってどこかを見上げていた。
「こーじの」
「え？」
「あれー」
その視線の先を辿ると少し高い所に陳列されているお菓子だった。そのパッケージにはモチーフなのか飛行船が描かれていて。
「あぁ、そういうこと」
「こーじすごいねぇ」
何だか勘違いをしている気もするけれど。お菓子のパッケージになるくらいこの街では飛行船やそれに関する産業が身近になっていることを加味すれば…まぁこじつけられなくもない。
「涼太くん」
「ん？」
「あれ、取ってあげて」
あいにく私には届かないところだったので涼太くんに取ってもらってそれをサクマに手渡す。
「おー」
「…キミ食べれないけどね。買う？」
「うんー」
パッケージに惹かれて欲しくなる子供だ。目を輝かせてそれを見つめたサクマはカゴに入れるとご満悦。
「この子、あったかいんだね」
「ん？」
「渡す時一瞬手が触れて、びっくりしたよ」
また自然な流れで私と繋いだサクマの手を見ている涼太くん。私としてはもうそれが当たり前だったけど、サクマと出会った時自分もびっくりしたことを思い出す。
「あぁ、うん。阿部ちゃん怖いよね」
「はは、そっか。阿部が作ったんだもんね」
何となくサクマを見るとそれに気づいたサクマも目を合わせてニコッと笑う。
「うん、本人の手は冷たいくせにね」
軽い冗談のつもりだった。それ以上でも以下でもなくて、さっさとタケノコをカゴに入れようと歩き出す。
「……ちょうど今の時期だったね、阿部が事故にあったの」
軽く流されるはずだった、はずだと思ってた。思わず振り返ると涼太くんは困ったように笑って私を追い越した。
「今日“義手”をいじってる所見て思い出しちゃってね、Aの様子も含めて」
ハッとして追いつくと涼太くんはタケノコを手に取ってカゴに入れながらそう話す。
「友達が腕を無くした姿なんて見るに堪えなかったけど、俺らより本人の方が立ち直るのが早くて」
あくまでも穏やかに、そして微笑んで。私は何も言えずに「お会計でいいかな？」とレジの方に向かう涼太くんについていくことしかできなかった。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
