様子がおかしい ページ23
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「お勉強おわった?」
「あぁ…まぁ、うん」
確かにお勉強だ。サクマに説明しようとして私が説明されてしまった。
私が返事をするとまた嬉しそうな表情を見せたサクマはなぜか腕を伸ばして私をその中に閉じ込める。
「……えっと?」
「んふふ」
何やら嬉しそうである。
「どうしたの」
「サクマ寂しかったー」
「えぇ」
全く寂しくなさそうに笑いながら私を包むサクマ。何だか彼の情緒が心配だ。
「……サクマ?」
「なぁに」
「どっか悪い?変な感じしたりしない?」
「んー?サクマげんきー」
「阿部ちゃんとこいく?」
情緒とかそういうのよりそもそもサクマは機械人形だった。内部の何かがおかしくなってないかと少し心配になった私は彼の生みの親の元に連れて行った方がいいのではと思った。昨日高い所行ったし、気圧とかでさ。
「あべちゃん?」
「うん」
「あべちゃんのお家いくー!」
意味を理解しているのかいないのか、元気よくお返事したサクマはニコニコ。この子、大丈夫だろうかと小さくため息をついた。うん、連れて行こう。
「ふっか」
「んー」
「何か手伝う事あったら連絡してね」
「おー」
この距離だから聞こえていただろう。振り向かずに手だけを振って適当な返事をしたふっかは相変わらず作業に勤しんでいるようだ。
「ふっかー」
「んー」
「ばいばい」
「おー」
サクマもサクマで見ていなくても手を振るのは欠かせないらしい。
・
「ぴんぽんする!」
阿部ちゃんの家が見えた途端にそう言ってまたちょっとダサい走り方でドアへとかけていったサクマ。インターホンが気に入ってるみたいだ。
嬉しそうにそれを押したサクマは「あべちゃーん」と彼の名前を呼んでニコニコ。ほんと好きだねぇ。
「はーい、あら」
「え、涼太くん?」
しかしドアを開けて出てきたのは家主ではなく胸に勲章を付けたあの人だった。
「あぁ、阿部が代わりに出てくれって。入りな?」
それでいいのか家主。少し呆れつつ中に入ると彼の姿は見えなくて。涼太くんにお客さん対応させるくらいだから多分下で作業でもしているんだろう。
「だてさん!」
「うん、正解。久しぶりだね」
「あべちゃんはー?」
「下にいるよ、おいで」
涼太くんにニコニコしつつも生みの親の姿を探すサクマ。そのまま彼についていって研究所へと足を進めた。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年12月2日 0時