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「何してたの」
「……康二の飛行船の飛行テストに着いていった」
「へぇ、頑なに行かなかったのに。乗ったってこと？」
「うん」
「ふーん。で？」
ふっかは優しい声色は崩さずとも、いつも通りな適当な感じで私の話を聞き出した。その方が話しやすいと分かっているのだろう。その通りだ。
「私…高い所そんなに得意じゃないみたい」
「まじ？お前俺らが木登りとか屋根裏上ってんの見てつれてけーって駄々こねてたくせに」
「…そんなこともあったね」
ふっと笑ったふっかの表情で自分もそのことを思い出した。一応年下で女の子だからって少し危険な遊びはさせないようにと各々の親たちに言われていたらしい。でも彼らについてかないと気が済まなかった私はわがままを言って私も、って
「そのたびに阿部ちゃんが宥めてさ？」
「そうだっけ」
「忘れてねーくせに」
もちろん覚えてる。そういうのの連続で、私はあの人たちの中でも阿部ちゃんは置いていかないでいつも一緒にいてくれる人だと認識していたんだから。
「で？」
「……怖かったんだよね。でもさ、楽しかった」
「ふぅん？」
「ここじゃ見られない景色が見えて、私が行きたかったようなところが見えて……でもね、何故かそれを康二に言えないの」
自分でも分からなかった。
あの時、康二に謝られた時。確かに怖かったけどサクマのおかげもあって嫌な思い出にはならなかった今日。嫌いな機械が連れて行ってくれた場所は機械の無い私の理想の空間で、その景色が見られただけでほんの少し救われた気がしたから。
機械に染まらない場所も、まだこの世にはあるんだって。
「康二が初めて一人で設計した飛行船なんだって。一生懸命作ったものだっただろうに、私楽しかったよって伝えられなくて…今思えば康二に伝えるべきことはたくさんあるのに……あの時の事が思い浮かんで…何でだろう……別に…飛行船なんて関係ないのに……」
康二に言われた一言がまた胸に突き刺さる。
「…飛行船嫌いなんやろ、って。言われちゃった………」
今日一日を通して大人になった幼馴染を目の当たりにした。一生懸命飛行船に向き合って、それに沢山の人がついていて。そんな幼馴染の努力の結果を、意識しなくとも踏みにじってしまった。
「そうじゃないのに…そうじゃないんだよ……」
今まで何をしてもずっといつも通りだった康二が、私の背中に向けて放った声は悲しそうだった。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
