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「は、また家出？」
「出かけてくるって伝えてますー」
呆れたような顔をしたふっかは読んでいた本をパタンと閉じた。そして前に置いていたカップを取って立ち上がる。
「あいつは」
「あいつって」
「サクマ」
「留守番命令出してきた」
「ほんっと身勝手な主人だな」
「主人にしたのは私じゃない」
いつものようにぽすんとソファに座った私はやっぱりぐちゃっと置いてあるブランケットにくるまった。あぁ、やっぱり無駄に座り心地がいい。
「お前、こんな時間に来てどうすんだよ。帰れよ？」
「………」
「やっぱ家出じゃん」
「だからちゃんと言ってきたのー」
正直この時間に来てすぐ帰る方がおかしい。そのくらいもう夜は更けている。
「星の研究なんだから夜に活動するのが当たり前でしょ」
「なにそれっぽい事言ってんだよペーペーが」
そんなことを言いつつやっぱり私の分の紅茶も淹れてくれるからふっかも大概だ。
「今度は何」
「だから、どっかのぐーたら研究者さんのお手伝いしてあげようと思ったの」
「残念ながら間に合ってるんだよ」
「助手を育てるのも仕事でしょ」
「今日は一段と口がうるさいなお前は」
はぁ、とわざとらしくため息をついたふっか。淹れ直した紅茶を啜ってもう一度息を吐く。
「言っとくけど、ちゃんと2人の分の夕飯作って食べさせて出かけてくるからね、帰りは明日かもって言ってます！止められもしなかったしサクマもいい子に話を聞いてくれました！」
じとーっと私を見るその目に向かって言ってやった。
「でも普通にしてたらこんな時間にここに来る理由なんて生まれないだろ」
でも、ふっかの声はさっきまでのめんどくさそうな声じゃなかったから
「何したんだよ、助手の教育してやろうじゃん」
落ち着いた優しい声に返すことはできなかった。真っすぐ私を見るその目にも、何も言い返せなくて。
「……こうじ」
「うん」
「康二が大人になってた」
「うん」
「……私だけまだ子供だった、でも大人になれないの。なんでだろう」
ブランケットをぎゅっと手繰り寄せるも、今日感じたどの温かさにも敵わなかった。サクマと、康二と。安心させるように伸びた二つの手のどちらにも、このブランケットは敵わない。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
