高い ページ13
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「わぁー！すごいねー！！」
そっと足を踏み入れたデッキ。当たり前だけど一瞬で外の空気になって、私に続いたサクマもぐんとテンションを上げた。
扉を閉めた康二は「こっちや」と前を歩き出し、出てきた後ろの方から飛行船の横の側面に移動した。
「たか……」
窓の外で並走していた鳥たちが今は目の前に見えた。そっと手すりの方まで移動するとさっきまでとは比べ物にならないほどの臨場感。
思ったよりも高く感じて、平気だと思っていた高い所に少し足がすくんだ。
「こーじ！こーじ！すごいよー！」
「せやろ？あの工場で作ってたもんが今空飛んでるんやで」
デッキの様子を確認しているのかこちらを見ていないのであろう康二と、興奮気味に話しかけるサクマの声が背中から聞こえる。私も少し後ろに下がりたいのに、一度前に出てきてしまってから足が竦んで思うように動けない。
手すりをぎゅっと握るので精一杯になってしまった。
「……高すぎっ」
私の頭上を鳥が飛んだのを感じた。その風でギュっと目を瞑った途端
「だぁいじょーぶー、サクマいるよー」
「へっ」
だいぶすっとんきょんな声を出してしまう。さっきまで聞こえてたテンションMAXな声とは違う、さっき船内で聞いた穏やかで落ち着かせるような声が耳元で響いて。それと同時に後ろからぎゅっと抱きしめられる感覚。
「…サクマ」
「うん、いるよー」
そっと目を開けて見上げると優しく微笑むサクマ。
「……こわい」
「たかいねぇ、でも一緒だからだいじょうぶー」
「うしろ、いきたい」
「まってぇ？あれ見てー？」
柄でもなくサクマにしがみ付いて顔を埋めた。でもトントンと背中を優しく叩かれて「きれいだよ」ってまた優しく響く声にそっと顔を上げた。
そこには
だいぶ街から外れて森が広がり、そしてその向こうには空とはまた違った青が広がっていて
「うみ……」
「すごいねぇ、きれいだねぇ」
太陽の光でキラキラと輝く海が広がっていた。
海なんていつ振りに見ただろうか。いつか、小さい頃に遊びに行った記憶が微かにあるけど……
「思い出せないな…」
「ん？」
「……ううん、綺麗だね」
「ねー」
気付けば強い風も高さも気にならなくなっていて、サクマの温かさに包まれながらただその海を眺めていた。サクマはその間、何も言わずに微笑んでいた気がする。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
