いつぶりかの外食 ページ48
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自室にまた残りのシャボン玉をしまってリビングに降りるとちょうど兄が帰ってきたところだった。
「おかえり」
「ただいま」
朝言った通り作業は早々に終わらせたらしく、いつもの作業着じゃなくて少しよそ行きな格好の兄。工場ではなくどこかに出かけていたらしい。
「どこ行ってきたの」
「ん、服買ったり新しい工具見に行ったり」
それなりの量の荷物を抱えてきた兄。ショッピングと言ったところだろうか、半分仕事のような気もするけど。
「何食いたいか決めた？」
「お兄ちゃんは何かないの」
「俺はなんでも食えるから」
準備してな、と言い残してそれらの荷物を自室に片付けに行ったのであろう兄。ぼんやーりと考えてはいたけど結局決め切れていなかった。
「サクマ、準備してだって」
と言っても彼が準備することなんてないだろうけど。私の声に立ち上がったサクマは「はーい」と返事をしてニコニコする。
上着を羽織って玄関に向かうとちょうど兄も降りてきて。兄妹で一緒に玄関から出る事すら久々に思えた。
「で、何食べる？」
「全然思いつかないんだよね」
「えー、朝から考えとけって言ったのに」
「お兄ちゃん決めていいよ、その方が助かる」
私のその言葉にとりあえず自分の中で目星をつけたのか「行こ」と街の方向を指さした兄。日がもうすぐ落ちていきそうな時間、いつもなら夕飯の準備を私か康二がし始めるだろう。
「あれ、サクマは」
兄が後ろを振り向くとすぐそこにいるサクマ。
「ずっといるよ」
「いや、いつもAの隣にいるイメージだから」
サクマは私たちの後ろをニコニコしながら付いてきている。
「そう？3人並ぶと狭いからじゃない？」
「ふうん」
と言いつつ、別に3人並んでも余裕な道の広さだという事に今更気づく。この前涼太くんとも3人で並んでこの道を歩いたはずだ。
「サクマ―、またよそ見して遅れないでよ」
「はぁい」
スーパーできょろきょろしていた彼を思い出して声をかけた。決してよそ見をしているわけではないんだけど。
「……康二とちゃんと話せた？」
しばらく何も言葉を交わさず歩いていた。次に兄が口を開いたのはもう少しで街に出るという時。あぁ、こういう話をするためにわざわざ外食なんて言い出したのかなって。
でも別に二人で話すなら家の中だって同じ条件だし、むしろ家の中の方が割り入った話はしやすいのになと、そう思った。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
