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「涼太くん、」
サクマの腕を引っ張りながら追いついたその横顔は優しく私に向く。
「どういうこと…？」
「そうだなぁ、その子に聞いてみたらいいよ」
涼太くんの目線は私を挟んでサクマに向いている。その言葉を受けてサクマを見ると彼は私たちの話なんかそっちのけで、どこかの煙突から出る煙から逃げるように飛んでいく鳥の群れを目で追っていた。
「お互いが遠回りしても、いつか伝わるんじゃないかな」
「え？」
「知ってる？阿部に教えてもらったんだけど、機械人形って不思議な事に作り手によって特徴とかが違ってくるらしいよ」
「……それって普通じゃない？」
「ううん、例えば同じ条件で全く同じ個体を作ったとしても絶対に同じ子にはならないんだって。性格が真逆になることもあるし、行動や雰囲気なんかも変わってくる。要は作り手の想いとか、感情が少なからず影響しているんじゃないかな、ってね？」
あくまでも阿部の考えらしいけど。
そう付け加えてまた涼太くんは歩き出す。あぁ、やっぱりこの人は掴めない。優しさやどっしり構える落ち着きがある反面こういうところがある。
「……なんかふっかに似てる」
「ん？」
「いや……なんでもない」
普段なら全く似てると思わないんだけど。こう、なんというか。核心を突かない、何かが分かるようで分からない言葉をかけて聞き返す余地を与えずにその空気を無くしてしまう感じ。
はぁ、と理解を諦めた私のため息とともに周りの景色が見慣れている場所になっている事に気付く。家に着く。
「あ……」
自分の家が見えてハッとする。色々な事を考えすぎて頭から抜けていた…というか、思い出さないようにしていた。私は康二と喧嘩別れみたいな状態なのだ。
帰り道、色々整理してどう康二と向き合うか考えるつもりだったのに。
……選んだ今日の食材だって、そういうことで。
「ん？」
「……えっと、多分まだ工場にいるから。私先作ってるね、お兄ちゃん達と一緒に上がってきて」
涼太くんから買い物袋を奪う。私は相変わらず手を離さない佐久間を引っ張るように早足で家に帰った。
「Aー」
「あ、サクマもみんなのとこいく？いいよ」
「ぎゅーしよ？」
「へ？」
部屋に入った途端ずっと黙っていたサクマが口を開く。買い物袋を置いた瞬間にパッと繋いでいた手を離すとこちらに向かって両手を広げた。
「おいでー」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
