みんな ページ7
・
「な、んで…」
「帰ろう！風邪ひいちゃう！」
しゃがんで私に目線を合わせたこの機械人形はその辺の個体よりもやけに喋りが滑らかで、服の中に見える繋ぎ目は比じゃなく綺麗で目立たない。
“俺の中では一番よくできてると思うよ？”
あの人の得意げな声が頭に響く。
確かに、機械人形としてはかなり良くできた個体だ。
「おんぶする！」
「へ？」
「背中乗ってね、サクマ運ぶ」
「え、ちょ」
目の前の機械人形は私の腕を掴んでからくるっと背を向けた。阿部ちゃんが作ったにしてはチャラいベージュの柔らかい髪の毛が揺れて、綺麗だななんて何故かのんきな事を思う。
「はやくー」
「うわっ、わ、分かったって」
無理やり腕をぐいっと引っ張るもんだから肩が外れそうになる。力加減はまだ学習前のようだ。
仕方なく背中に乗るとひょいっと立ち上がった彼は置いていた傘も器用に肩にかけて歩き出した。なぜだろうか、機械人形なはずなのに冷たくない。
引っ張られた力が強かったから、馬鹿みたいに走ったりするのかと思えば彼は普通に歩き出す。おんぶなんてされるのはいつ振りだろうか、少しの揺れと何故か感じる温かさが心地いい。
ぼーっとしてるといつの間にか身体がずんと重くなった気がした。まぶたも重い。
「A、A」
一体どこで私の名前を覚えたのだろうか。
彼の呼び掛ける声が聞こえるけれど、私は答える気力もなくて。
「大変！あつい！風邪引いちゃう！」
少し焦ったような彼の声を最後に、私は記憶が途切れたようで。
次に目を覚ました時には飛び出したはずの場所にいた。あの機械人形と、会いたくなかった兄と阿部ちゃん。おまけに康二までもが私を囲んでいて。
「A起きた！」
相変わらずにこにこの笑顔で私を見る機械人形は私が目を開けた途端にすぐ声を上げて。その笑顔が物理的に光を発しているかのように眩しすぎて目を細めた。
「A、分かるか」
その中で唯一まだ安心できる人の声が聞こえて
「こうじ…」
「うん」
この人にだけは少しだけ素直になれる私は
「……意味わかんない…みんな大嫌い……」
そんな捨て台詞のような言葉を投げてから、また眠ったんだそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1379人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - hanakoさん» hanakoさん。コメントありがとうございます！序盤でそんなに気に入って下さるなんて嬉しいです……！私の文章で少しでも楽しんでいただけたらそれほど嬉しいことはないです。ぜひ今後の更新もよろしくお願いします！ (2022年11月28日 22時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - りかちゃまさん» りかちゃまさん。コメントありがとうございます！ほんとですか！よかった〜まだ序盤ですが、今後もよろしくお願いします！ (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ちゃそさん» ちゃそさん。お待たせいたしました〜！ぜひ今作もよろしくお願いします！お気遣いありがとうございます…！ (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - この序盤で既に泣きそうです、、。世界観に浸ってしまいますし、ぽぷらさんのお話は毎回心に刺さって本を読むことが嫌いなわたしでも文章を読むことが好きになりそうです泣続きも楽しみにしております！ありがとうございます！ (2022年11月16日 0時) (レス) @page8 id: 51201bff50 (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - 世界観がすごく好きですж･｡(･▽･*)･｡+更新楽しみにしてます！ (2022年11月15日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年11月14日 20時
