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「A」
階段を上っていた矢先、後ろから聞こえた声はいつもより低かった。
「おかえり、ちょっとこっちきな」
腕を組んで私を見上げていたのはいないと思っていた兄だった。
「……なに」
「何じゃないでしょ、何か言うことあんだろ」
リビングに向かい合って座った私達。何かを感じ取ったのか、サクマは少しだけ遠慮がちながらも私の隣にそっと座る。
「無いよ」
反抗が半分、本当に何を言えばいいのかが分からない半分。家出してごめんなさい？今更そんなこと言ってほしいわけでもないはずだ。子供じゃあるまいし。
そんな私の様子にため息をついた兄。
「別に一晩いなくなったくらいで怒ったりしねぇよ」
「…じゃあ何、私疲れたから寝たい」
「お前康二に酷い態度とったんじゃないの」
康二？顔には出さずとも心の中で疑問を浮かべた。まさか彼の名前が出ると思わなくて。
「…知らないよ」
「じゃあ何であいつあんな顔して帰ってきた」
「だから知らないって」
「別に詳しく聞いたわけじゃない。でもお前の事心配して探しにまで行ったやつが悲しそうな顔して帰ってきたんだよ。なんか心当たりないわけ？」
兄の真っすぐで鋭い目。ただでさえ怖そうな見た目をしてるのにそんなんされたらいくつになっても腰が引ける。昔はよく、自分より小さい子によくその目が出来たものだと怒られながらもどこか冷静に思っていた。
「……」
「ちゃんと謝れ」
「だから知らないって」
「知らないわけないだろ。大体、この家出るとか急に何言ってんの？俺に相談もせずに」
「なっ…それは」
そこまで話がいっていたようだ。確かに、冷静に考えれば兄であるこの人に伝わらないわけがなくて。勢いで言ったことだと今では思っているけれど、それでもあの時を最後に顔を合わせていない康二からしたら一大事だったかもしれなくて。
「……それ、は」
「……ほんとにそう思ってんの？何で？」
兄の声がほんの少しだけ優しくなった。ほんの少し。そして俯く私を覗き込むように見ている兄の顔がただ怒っているだけのものじゃなかった。
ほんの少し、悲しそうだった。
「この家に居たくない理由があんの？その原因は俺？康二？」
なぜかその顔を見て涙が込み上げてしまう。泣くべきじゃない、涙を見せたくない。その思いとは裏腹にどんどんぼやけていく視界。
そんな時、ふわっと何かが私を包んだ。
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ぽぷら(プロフ) - hanakoさん» hanakoさん。コメントありがとうございます！序盤でそんなに気に入って下さるなんて嬉しいです……！私の文章で少しでも楽しんでいただけたらそれほど嬉しいことはないです。ぜひ今後の更新もよろしくお願いします！ (2022年11月28日 22時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - りかちゃまさん» りかちゃまさん。コメントありがとうございます！ほんとですか！よかった〜まだ序盤ですが、今後もよろしくお願いします！ (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ちゃそさん» ちゃそさん。お待たせいたしました〜！ぜひ今作もよろしくお願いします！お気遣いありがとうございます…！ (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - この序盤で既に泣きそうです、、。世界観に浸ってしまいますし、ぽぷらさんのお話は毎回心に刺さって本を読むことが嫌いなわたしでも文章を読むことが好きになりそうです泣続きも楽しみにしております！ありがとうございます！ (2022年11月16日 0時) (レス) @page8 id: 51201bff50 (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - 世界観がすごく好きですж･｡(･▽･*)･｡+更新楽しみにしてます！ (2022年11月15日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年11月14日 20時
