壊れて消えた ページ38
・
「ふっかまたね」
「おう、こいつにご飯ちゃんと食べさせてあげな」
「もういいって、うざい…」
サクマがいると変な事を言いかねない。本当はもう少しここに居ようと思ったけどどうせサクマに連れ帰られるならと早めに出ることにした。
最後までニヤニヤと面白がっていたふっかに今度は本当に睨みを効かせた。そんな私の隣でサクマはニコニコしてふっかに手を振る。
「いいおてんき!あ、つき見える?」
外に出た途端しばらく浴びていなかった日の光に目を細める。サクマは元気いっぱいに息を吸ってこんなことを聞いてきた。
「月は…まだ昼間だから見えないね」
「みえない?」
「うん。夕方くらいになればうっすら見えてくるよ」
ちゃんとした答えが出来ないのは許してほしい、まだ勉強中だから。サクマは楽しみだね!なんて言って歩き出した私の隣に並ぶ。
しばらく歩いているとサクマが急にキョロキョロを少し上の方を気にしだした。何だか転びそうで危なっかしくてサクマ?と声をかけると私の目の前にある物体がふわふわと浮かんできたのだった。
「これ、なあに?」
それは向こうの公園で遊んでいる親子から流れてきていた。
「シャボン玉」
「しゃぼ…?」
「しゃ・ぼ・ん・だ・ま」
「しゃぼん、だま?」
「うん、そう」
日の光で輝いているように見えるそのまるい物体。ちょうど大きいそれがサクマの目の前でパンッ!と破裂した。
「うわぁ!…わーなぁにー!にゃはは!」
目をしぱしぱさせながら無邪気に笑ったサクマ。見かけは私よりも背が高い成人男性なもんだからしゃぼん玉ではしゃぐ様子が何ともミスマッチ。
……と言いたいところだけど
どこか少年みがあって元気なサクマは不思議のその様子に違和感が無い。ふわふわと流れてくるシャボン玉をつんつんと触っては、はじける様子ににゃはは!と独特な笑い方ではしゃいでいる。
「…サクマ」
「んにゃ?」
「サクマもやる?シャボン玉」
そんな私の言葉を聞いてきょとんとしたサクマ。向こうの親子がふーっと息を吹いてシャボン玉が出来上がっていく様子を指さすと、その瞬間にぱぁっと目を輝かせたサクマは思いっきり頷いた。
「やる!サクマ!しゃぼんだま!」
「……阿部ちゃん、サクマの年齢設定いくつにしてるんだろう」
私が小さい子供に見られているというより、サクマは自分も含めて小さい子供同士だと思っているのかもしれない。
1379人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - hanakoさん» hanakoさん。コメントありがとうございます!序盤でそんなに気に入って下さるなんて嬉しいです……!私の文章で少しでも楽しんでいただけたらそれほど嬉しいことはないです。ぜひ今後の更新もよろしくお願いします! (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - りかちゃまさん» りかちゃまさん。コメントありがとうございます!ほんとですか!よかった〜まだ序盤ですが、今後もよろしくお願いします! (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ちゃそさん» ちゃそさん。お待たせいたしました〜!ぜひ今作もよろしくお願いします!お気遣いありがとうございます…! (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - この序盤で既に泣きそうです、、。世界観に浸ってしまいますし、ぽぷらさんのお話は毎回心に刺さって本を読むことが嫌いなわたしでも文章を読むことが好きになりそうです泣続きも楽しみにしております!ありがとうございます! (2022年11月16日 0時) (レス) @page8 id: 51201bff50 (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - 世界観がすごく好きですж・。(・▽・*)・。+更新楽しみにしてます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年11月14日 20時