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「………サクマ?」
思わず立ち止まって振り返った。
サクマのおしゃべりは機械人形の中でもかなりレベルが高くて普通の人間の声と聞き分けがつかない程だと思う。
でも、どこか機械っぽいというか学習段階なんだなと感じる部分があるのも嘘じゃ無い。
でも今のこの一言は、妙に機械人形っぽくなかった。
人間そのものだった。
「Aを笑顔にするのがサクマの役目!」
にっこり笑ってそう言うサクマは嬉しそうだった。本当に機械人形なのかと疑いたくなるほど感情が豊かだ。
「……行くよ」
その眩しい笑顔に私はどう反応すればいいのか分からず、彼の腕を掴んで目的地に向かってまた足を進めた。
どんな役目だよ、って。
心の中で可愛くない悪態をつきながら。
「A、A」
「なに」
「Aはこっち」
ズンズンと歩く私に引かれながらサクマは少し立ち止まって逆に私の腕を引く。何かと思ったら私と道路の間に少し無理やり入りこむ。
その瞬間、また車の水はねがサクマの足元に少しだけかかった。
「行こ!」
またニコッと笑ったこの機械人形は私なんかにつかせているのが申し訳ないほどに学習能力が高いみたいだ。
その生みの親の家まであと少し。
「あべちゃんあべちゃん!」
目的地に着くなりまだピンポンもしてないのにサクマは大きな声でその人を呼ぶ。落ち着け、と大型犬みたいなのを宥めながらそのボタンを押す。
その途端に
「はぁい、やっぱ2人か。笑」
多分サクマの声が聞こえてたんだろう。そのピンポンが鳴り終わらないうちに扉が開いた。
「具合どう?熱下がった?」
「下がったから来てる」
相変わらずこんな態度をとってしまう私にも彼は穏やかに笑う。ひとつしか変わらないはずなのに、昔から彼のことはずいぶん大人に見えたものだ。
多分そのくらい、自分が子供なんだろう。
「サクマ充電できた?」
「したよー」
「おぉ、よかった」
「Aも朝ごはん食べた」
「ふふ、そっかそっか。そりゃよかった」
いらん事を報告するサクマにため息。そんな私を知ってか知らずか阿部ちゃんは笑って私達を連れてまた地下の方に。ナチュラルで落ち着くような彼らしい住居スペースの下、サクマが生まれた研究所。
「どう?いい子でしょ」
ちょっと見せてーってサクマの背中を覗きながら、得意げにまた笑う彼の事は
やっぱり嫌いだ。
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ぽぷら(プロフ) - hanakoさん» hanakoさん。コメントありがとうございます!序盤でそんなに気に入って下さるなんて嬉しいです……!私の文章で少しでも楽しんでいただけたらそれほど嬉しいことはないです。ぜひ今後の更新もよろしくお願いします! (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - りかちゃまさん» りかちゃまさん。コメントありがとうございます!ほんとですか!よかった〜まだ序盤ですが、今後もよろしくお願いします! (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ちゃそさん» ちゃそさん。お待たせいたしました〜!ぜひ今作もよろしくお願いします!お気遣いありがとうございます…! (2022年11月28日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - この序盤で既に泣きそうです、、。世界観に浸ってしまいますし、ぽぷらさんのお話は毎回心に刺さって本を読むことが嫌いなわたしでも文章を読むことが好きになりそうです泣続きも楽しみにしております!ありがとうございます! (2022年11月16日 0時) (レス) @page8 id: 51201bff50 (このIDを非表示/違反報告)
りかちゃま(プロフ) - 世界観がすごく好きですж・。(・▽・*)・。+更新楽しみにしてます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 09587eedf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年11月14日 20時