・ ページ31
・
その"全て"にはもちろん
共通して"不安"がある。
今までも分かってたつもりだったけど、この病室から出ようとしたその時に充電だと発した彼から今までで一番の"不安��を感じた。
「……人ってね、守るべき物ができると強くなれるんだって。多分誰もがどこかで聞いたことあるような言葉だよね。それは多分小説とか、曲とか、映画とかなのかな。綺麗事かもしれないけど、妖怪たちを見ててその通りだなって思ったの。阿部くんを守るみんなは本当にかっこよかった」
自分の身体へと戻った阿部くんに妖怪たちの話をするのは酷だろうか。自分でも何でこんなことを話し出したかは分からないんだけど、自分の中で説得力がある例がこれだった。
「私、阿部くんに守ってもらいたいな」
彼が強くなれる理由に自分をあげるなんて
ほんと自意識過剰な。
「……何から」
「セクハラ上司とかかな」
「ふっかがやってたじゃん」
「もしかしてやきもち焼いたりしてくれた？」
きっとまた人間として生きることが不安な彼に対して、大丈夫だよなんて軽々しく言いたくない。私だって彼をこの世界で幸せだと思わせることができるか不安なんだから。
だから、お互いがお互いを守ろうとして
一緒に強くなっていければいい。
「……俺だってずっと苗字じゃヤダ」
「あれは呼ばされたんだけどね」
「じゃあ俺だって」
「ううん」
彼の言葉を遮った私。
少し強引に彼から離れて向かい合った。
「行こう、亮平くん。ふっかさんが待ってるよ」
そして再び扉に手をかけて
「ふっかさんには
私は彼に向かって笑って見せて、そしてその扉を開くと同時に廊下へと出た。
彼がこの病室から一歩踏み出した時、彼の人間としての日々がリスタートする。その一歩がどれほど怖いことなのか、私は分かってるようで分からないのかもしれない。
ただ
「……ずるい。ほんとに」
彼はちゃんと足を進めた。一年間眠り続けた病室から踏み出した。そして真剣な顔で、私の手を取った。
「頑張るから、守らせて」
「ん、私も頑張る」
病室の扉が閉まる。
きっともう来ない、そう信じたい。
「おーい、おせーぞー」
「はーい！」
少し遠くからふっかさんが呼びかける。返事をした私より先に、彼はその方向に歩き出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3478人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小袖(プロフ) - ほんとに良すぎてふつえの小説として売り出して欲しいほどの満足感でした！伏線回収に気づいた瞬間が気持ちよくて、たくさん設定などを考えて時間をかけて作った作品なんだなと感じました。また他の作品もいくつか読ませていただいてますがどれも素晴らしいです！ (8月16日 13時) (
レス) id: 67585063eb (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 何度もループして読ませて頂いています！番外編も是非読んでみたいと思いTwitterフォロリク送りました。お手隙の際に承認して頂けると嬉しいです。これからも応援しています！ (2023年3月7日 1時) (レス) @page50 id: 828447a6ad (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - いつも素敵なお話読ませて頂いてます！ほんとにどれもいい作品で感動して涙が止まらないことも多々です、番外編なども読みたいと思ってしまったのでTwitter同じ名前でフォロー致しました、！承認していただけたら嬉しいです！これからも応援しています！だいすきです！ (2023年2月7日 5時) (レス) id: a15df57567 (このIDを非表示/違反報告)
akiaki(プロフ) - (続き) このお話のおかげでちょっと日常が楽しく､優しく思えました。素敵なお話ありがとうございました。 (2022年9月23日 9時) (レス) id: aa9a6e18cc (このIDを非表示/違反報告)
akiaki(プロフ) - はじめまして。もうアニメ化しません？って言いながら読んでいました。小説家さんなのでしょうか、気づかせるための伏線も泣かせるための伏線も上手すぎます。物語の感想じゃなくて申し訳ないのですが､このお話が紙の本として手に取りたくてしょうがありません｡(続く) (2022年9月23日 9時) (レス) id: aa9a6e18cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年6月24日 23時
