あの人の幸せ ページ46
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「……ん?」
「降りてきてぇって」
この空気を察しているのかいないのか。いつのまにか人間の姿になった康二くんが私たちに声をかける。
「さっくん、ご主人様もおるでー。……あ、一緒においでやって。なんか見せたいものがあるらしいで」
きっとどこかに出かけたさっくんとお話ししている康二くん。私を見てにっこりと笑う。
「下まで送ってくわぁ。鳥居で待っとるな?」
そして白狐の姿になって部屋から出ていった。
「……行こっか。何だろうね、見せたいものって」
立ち上がった阿部さんはいつもの様子に戻っていた。パソコンを閉じて私も立ち上がったのを見て部屋を出ていく。いつの間にか深澤さんはいない。
「康二、安全運転」
「分かっとるってー。急ぎやないみたいやしゆっくり行くで」
私と阿部さんを背中に乗せた康二くんは私が前の阿部さんに捕まらなくてもいいくらいのスピードで山を降りていく。
周りの木々、たまに阿部さんの背中。その2つを眺めながら風を感じる。
「阿部さん」
「ん?」
「阿部さんはいつから康二くん達が見えるんですか?」
「んー、一年ちょっと前かなぁ」
「急に?」
「まぁ、うん」
私にも言える事なんだけど。妖怪が見えるきっかけや理由なんてものがあるのだろうか。考えても無駄だってことは分かるしもう受け入れてはいるけど、阿部さんが醸し出すどこか不思議で柔らかくて、そしてたまに感じる影が気になっていた。何か関係しているのだろうか。
「この道まっすぐ行って曲がったところに病院あるやろ?そこでさっくん待っとるって」
「病院…あぁあそこか」
「きぃつけてなー、ご主人様夕飯も一緒に食べような!帰ったらあかんで!」
「ふふ、うん」
可愛い狐さんに見送られて、阿部さんと一緒に向かうのは病院。確か少し大きめな総合病院だったはず。
程なくして着いた病院の駐車場の入り口。そこに佇んでいたのはニコニコと笑うさっくんだった。
「どうしたの」
「ふふ、ちょっと着いてきてー!」
病院の入り口に向かう彼に着いて行くとお医者さんであろう白衣の人と数名の看護師さんが誰かを見送っている所だった。きっと夫婦なのか恋人なのか、1組の男女が。
「阿部ちゃん、あの人覚えてない?」
「…あ、この間」
人間の私と阿部さんの事を考慮してか、さっくんはあの家族達からは見えないであろう場所に私たちを連れてから指をさした。
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柊(プロフ) - 19ページ目の、阿部ちゃんがこーじをたかいたかいしてる画が想像できてしまって幸せです。皆が最高過ぎて読み進める手が止まりません笑笑 (2022年8月28日 22時) (レス) @page19 id: 27767aadd1 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!小狐さんと白狐のギャップ、いいですよね🦊ぜひこれからもお楽しみいただければと思います! (2022年5月21日 5時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
みぃ。(プロフ) - はじめまして!タイトルに惹かれて読ませて頂きました。すごく面白くて一気読みしました!小狐の彼、想像できて可愛い!それで九尾の白狐って、カッコ良すぎます!続きも読ませて頂きます! (2022年5月18日 17時) (レス) @page50 id: fb4296a570 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - cotyさん» はじめまして!コメントありがとうございます😊気に入っていただけてよかったです〜!少しゆっくりにはなってしまいますがこれからもお楽しみいただけると幸いです! (2022年4月10日 11時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ayaさん» こんにちは!いつもありがとうございます☺️怖さよりはほっこり感が強めなので今更ですが安心して読んでいただけると(笑)おかっぱの彼、よく考えれば十四松……🟡 (2022年4月10日 11時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年3月8日 21時