・ ページ26
・
「立ったままはさすがに寝れない…」
「康二の事落っことしちゃうねぇ」
「俺かて着地くらいできるわい！」
にゃははって笑った佐久間さん。いや、さっくん。座敷童って小さいイメージだけど彼は私より身長も大きければこうやって私を撫でる手も大きい。子供の妖怪って聞いたことある気がするけど、そもそも妖怪に年齢の概念なんてないんだろうなぁ。
「何でさっくんは私のところに来てくれたの？」
「ん？幸せになってほしいなぁって思ったから。阿部ちゃんが見つけた子だしね〜」
「阿部さん？」
さっくんはニコッと笑って廊下の縁側に腰かけた。振り返って私を見るから隣に腰を下ろすと康二くんはいつものように膝で丸くなる。
「座敷童は気まぐれなんだよ。気が向いたらフラっと街の方に行ってお家にお邪魔するけど気が向かなかったらここでのんびりしてる。やみくもにみんなのところに行ってるわけじゃないの」
足をブラブラさせながら木々の隙間から差し込む光を眺める彼。穏やかな表情が綺麗な横顔を引き立てて、何だか儚ささえ感じるその姿はやっぱり美しい。
「自分が幸せにしてあげたいって思った人のところしか行かないよ」
「そうなんだ」
「でもね、阿部ちゃんと出会ってからはそういう人が増えた。阿部ちゃんがこの人助けてあげてって教えてくれるの。直感でしかないんだけど、阿部ちゃんが選んだ人は俺も幸せにしてあげたいなって絶対思うの。不思議だよね」
不思議な存在である妖怪さんにも不思議だと思う出来事は起こるらしい。この世は本当に謎だらけ、不思議だらけ。今隣にいるさっくんも膝の上で多分寝てる康二くんも、私と阿部さんと深澤さん以外の人間には見えないらしいのだから。
「幸せ、か」
ありがたい事に私はその2人の中で幸せにしたい対象だったらしい。ただ何をもって幸せになったと言えるんだろうなと思わず道徳的な事をぼんやりと考えてしまう。
「俺、幸せを運ぶとか言われてるけどそれがいつその身に降りかかるのかも、その幸せが何なのかも分からないんだ。でも一度俺が力をかけた人ならその効果が表れたかどうかは見れば分かる。Aちゃんはまだみたい。だからそれまでに死んじゃったりなんかしないでね」
思わず彼を見た。急に物騒な単語が聞こえたからだ。
その視線に気づいたさっくんは困ったように笑って、またぽんぽんと私の頭を撫でてから立ち上がると部屋の中に入っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2223人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - 19ページ目の、阿部ちゃんがこーじをたかいたかいしてる画が想像できてしまって幸せです。皆が最高過ぎて読み進める手が止まりません笑笑 (2022年8月28日 22時) (
レス) @page19 id: 27767aadd1 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» 初めまして！コメントありがとうございます！小狐さんと白狐のギャップ、いいですよね🦊ぜひこれからもお楽しみいただければと思います！ (2022年5月21日 5時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
みぃ。(プロフ) - はじめまして！タイトルに惹かれて読ませて頂きました。すごく面白くて一気読みしました！小狐の彼、想像できて可愛い！それで九尾の白狐って、カッコ良すぎます！続きも読ませて頂きます！ (2022年5月18日 17時) (レス) @page50 id: fb4296a570 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - cotyさん» はじめまして！コメントありがとうございます😊気に入っていただけてよかったです〜！少しゆっくりにはなってしまいますがこれからもお楽しみいただけると幸いです！ (2022年4月10日 11時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ayaさん» こんにちは！いつもありがとうございます☺️怖さよりはほっこり感が強めなので今更ですが安心して読んでいただけると（笑）おかっぱの彼、よく考えれば十四松……🟡 (2022年4月10日 11時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年3月8日 21時
