時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ10)

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「阿部ちゃんとご飯行くんでしょ？」

「んあー？何で知ってんの？」

「ふっかから連絡きたーって言ってたから」

授業が終わり、隣で眠そうにしているふっかに声をかける。そうやってぼーっとしてるからレポート書けないんだって心の中で文句を言いながらノートやらペンケースを片付ける。

「お前と違って快くいいよって言ってくれたわ」

「ちゃんと理由があるから断ってる」

「バイトだろ？働き過ぎじゃね？」

「実家暮らしに一人暮らしの経済事情なんて分かんないもんねー」

「うるせー俺だってバイトくらいしてるわ」

大学と実家が近いふっか。確かどこかのゲームセンターで働いてるって言ってたけどその頻度は週１、２とかそのくらいらしい。別に私も実家から通ってればこんなに働いてないだろうし、それを悪く言うつもりはないんだけど。

「んでさ、今日暇でしょ？」

「え？…暇じゃない」

「嘘だ。阿部ちゃん言ってた、今日A休みって」

「……あべぇ」

「飯行くぞー」

「えぇ私今日現金ないんだけど！」

「大めに出すって」

してやったり顔のふっかはほら行くぞーって私の背中を押す。さっきまでの眠そうな顔は無くていつものあの余裕そうな笑みを浮かべている。

「あ、ファミレス無しな！」

「は？」

「俺昨日のレポート出したもんねー。褒めてほしいよまったく」

「……負けたわ」

素直にびっくりしたのと同時に、今日は付き合ってあげてもいっかと思う。黙ってついてきた私を見て余裕な顔を崩して無邪気に笑ったふっかはどこ行くー？なんて上機嫌で。

何度も思ったことだけど
何でこんなに私に構うんだろう。

本人も言ってる通り、モテるし人気者だし。こうやって私といなければいつも彼は会話の中心で色々な人と仲がいい。高校の同級生だから？まぁ、私以外だと仲良かった人はいないもんなぁ。

「A行きたいとこある？」

「ふっかに任せるよ。私あまり詳しくないし」

「お酒いける？」

「うん」

お酒久々だな、なんて思いながら。高校からの付き合いな彼とお酒を飲める歳になってもつるんでいる事を不思議に感じて。見慣れたはずの2つのピアスもどこか彼を大人に感じさせる。

「よし、ここ行こ」

「へぇ、いい雰囲気じゃん」

「だろ？」

得意げに笑ったふっか。この間まで明るかった髪が暗くなっていて、さっき大人になったななんて思ったそばから高校時代の彼を思い出した。