時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ7)

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Aちゃん、お返事ありがとう。
素敵な名前だね。

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そんな書き出しの手紙が机に置いてあったのは3日後の事だった。いつも通り帰宅した私は恐る恐るその手紙を開き、あの丁寧な字をまた見てしまった。

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そうだよ、僕が今生きているのは大正。
20XX年か、想像できないな。

僕の時代にも電話はあるけれど、1人1台持っているの？
未来では何でもボタン一つでできてしまうんだね。
本当にこんな便利な機械ができているなんて
僕の予想も捨てたものじゃないね？
教えてくれてありがとう。

じゃあ今度はAちゃんの事を教えてくれないかな？
その前に僕が自己紹介をするよ

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彼は本当に100年前の東京に住んでいる人らしい。そして私と同い年で家業の手伝いをしながら暮らしている。そして弟や妹が沢山いて、毎日面倒をみているんだって。

またパソコンで大正時代について調べてみた。この時代は兄弟が多くいるのが一般的で年齢差も広かったらしい。毎日にぎやかで楽しいよ、なんて書かれていた文章からは大変さは感じられなくて。面倒見のいいお兄ちゃんなんだなと思った。

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私もリョウくんと同い年だよ。
今は大学に通っていて、アルバイトっていうのもしてる。
1人で暮らしているから少し大変だけど
自分の時間を大事にできるのは好きだな。

リョウくんはとっても素敵なお兄ちゃんなんだね。
きっと弟さんや妹さんもリョウくんが大好きなんだろうな。

ちなみに今の元号は「令和」っていうんだよ。
私も100年前のことは想像できないな。
でも昔の事は勉強できるから
リョウくんの時代の事を調べてみようと思います。

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また夢中で書いていた手を止めた。
今気づいたけれど、100年前の文章の書き方なんて今と全然違うんじゃないのかな。でも、私の元に届いた手紙は現代に生きる私でもちゃんと読めるもので。

調べてみると当時の文章はとても読めるものではなかった。かろうじて平仮名や漢字の区別はつくものの、筆記体のような流れる字体は現代人にとっては馴染みが無いもの。

逆もしかりだ、この文章を彼は読めるのだろうか。お互いが読めるように勝手に変換でもされるのかな。

「……いや、考えても仕方ないや」

私はまた便せんを2つに折り、ベッドに倒れ込んだ。そもそもこの手紙が届く事自体が不可思議なことで、実際これが現実なのかも分からない。すべて夢なのかもしれないなんて思いながら、私はまた眠りについた。