時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ6)

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私は時田A。
20XX年の東京に住んでいます。
あなたは本当に100年前の人なの？
大正時代の東京に住んでる人？

今の時代には「エアコン」というものがあってね、冷たい風も暖かい風もボタン一つで出してくれる機械があります。夏は部屋を涼しく、冬は暖かくしてくれます。

服を洗うのは洗濯機。服と洗剤を入れてボタンを押せば勝手に洗ってくれて、脱水もしてくれます。

携帯電話は1人1台は必ず持っているものです。これも、ボタンを押せば色々な人と電話ができたり、文字でメッセージを送ることができます。大きさは片手で持てるくらい。スマートフォンとも言うよ。

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「……あっ」

ハッとした。気づけば便せんは埋まっていた。
いつも授業で取るノートより丁寧な字。何かに囚われたかのように夢中で書いていた。

ピーっと洗濯機の音が鳴る。洗濯が終わった合図だ。

「勝手に洗ってくれる……」

当たり前だ。私が生まれた時から洗濯機は存在していて、自分で小学校の上履きを洗う事はあっても服を洗う事なんてほぼ無かった。

またパソコンで調べてみる。
大正時代の洗濯は桶に水を入れて洗濯板でこすって洗う…歴史の授業で見たであろうビジュアルの写真が。後期になると手回し洗濯機なるものが登場し、ただかなりの高級品で普通の人は手に入らない代物だった……

この“リョウ”という人物はまだ桶で洗濯をしているのだろうか。

「歴史…そんな好きじゃなかったんだよな」

なんだか高校の時を思い出した。勉強はそれなりにしてたけど、興味を持っていたわけでは無かったしただテストで点数を取るためだけに暗記をしていた科目。

文字で埋まった便せんを、届いた？ものと同じように2つ折りにした。そして机から立ち上がり、洗面所に向かう。

柔軟剤の匂いを感じながら洗濯物を干した私はほどなくしてベッドに潜り込んだ。課題をすることをすっかり忘れて。

翌朝目が覚めた時にそれを思い出してちょっと損した気分になったのもつかの間。机に置きっぱなしだったはずの便せんが無くなっていることに気付いた私は、姿を知らない、もはや存在しているのかも分からない“リョウ”という人物のことを思い浮かべたのだった。