時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ41)

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阿部亮平A大丈夫?

そんなLINEを送ったのはバイトが終わってすぐ。程なくして既読がついたそのメッセージに対しての返信は秒だった。

深澤辰哉は?

阿部亮平何か危なっかしいんだけど

そしてそのメッセージを送って数秒後には電話がかかってくる。俺はまだ1時間シフトが残っているAの様子を店の外から見ながらその電話に出た。

「何があったの」

「今日すごいぼーっとしてんの。体調でも悪いのかと思って大丈夫？って声かけたら変なこと言い出すから」

"今後絶対に会うことが無いの。でも文字のやり取りはできる。文字でしかコミュニケーション取れないの。"

俺の中で心配な事は二つあった。

一つはAが変な人に騙されたりいいように使われたりされないかと言う事。

二つ目は

「……ふっか、まだ分かんないんだし諦めんなよ」

Aが、ふっかでは無い誰かを好きになった時の
彼のメンタル。

「は、何だよそれ…」

「ごめん、俺としてはこんな事言いたくなかったけどその前にAが心配だから」

「……明日聞き出してみる」

「無理はすんなよ」

「あいつに何かあった時の方が無理」

お節介かもしれないけど。

2人と友達だからとかそう言う事じゃなくて、長い付き合いだからこそふっかの良さを知っているから。そんなふっかが一途にずっと想っている相手にもそれを知ってほしいから。

深澤辰哉ごめん、俺も詳しい事はあまり聞き出せなかったんだけど

「ねぇどうやって断ればいい？」なんて大真面目に聞いてくるような素直で可愛らしい彼女の相手はふっかがぴったりだと思うなっていう素直な俺の気持ち。

深澤辰哉好きな人がいるってさ。

それでもそんなに上手くはいかないみたいで

深澤辰哉Aが目の前で泣いてるからさ、俺泣けなかったわ。

明らかに落ち込みながら料理を運んでる店の中のA。心の中では泣いてるふっか。そして心配の気持ちでいっぱいになる俺。

誰一人としていい思いはしてないこの状況。

顔を合わせるたびに思い詰めた表情を強めていったAは、ある日休憩後店に戻ろうと扉に手を伸ばした時

その手がドアノブに触れる前に
身体を崩したのだった。