時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ5)

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「ふぅ……」

帰宅すると同時に息を吐く。そのまま洗面所に直行し、バイトで着ているTシャツとエプロンを洗濯機に入れた。ついでに今着ているものも脱いで入れる。洗剤と柔軟剤を入れ、ボタンを押す。

そのまま浴室に入りシャワーを浴びる。あぁ、ボディーソープが切れそうだ。明日買いに行かないと。

大学入学と同時に始めた一人暮らしもとっくに当たり前になって。最初は全て自分でやらなきゃいけない事に大変さを感じていたけどもう慣れっこ。

明日は大学終わりにドラッグストアに寄らないとなぁとか、そういえば今日の授業で課題が出たからやらないとなぁとか。ドライヤーをしながらこうやってぼーっと考えるのも日常だ。

「……ん？」

洗面所を出てさっき思い出した課題をやろうと机にパソコンを置いた時だった。また見覚えのない紙が一枚。それは２つに折られているようで、少しだけ隙間から見える内側には何かしらが書かれているようだった。

この前の不可解な出来事を思い出してゾッとするも、何故か好奇心が勝ってしまってその紙を手に取った。

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僕の独り言に返事をしてくれるなんて。
とても驚いたよ。でもとても嬉しかった。

僕はリョウ。君は誰？

100年後を生きてる人なのかな？
未来の東京を知っているの？

不思議な事が起こるもんだ。
もっと詳しく教えてよ。
本当にそんな機械があるのかい？

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「リョウ……？」

前に見た、時代を感じる字体。それでも少し丁寧に書かれている文章はこの前とは違ってあきらかに誰かに宛てられたようなものだった。

100年後。じゃあこの人は100年前の人？立ち上げたパソコンで100年前を調べてみる。

「大正…」

令和の今から100年前は様々な面で日本に大きな変化があったとされる大正時代。「大正デモグラシー」「大正ロマン」などなど中高で習ったであろう言葉がネットに並んでいた。たった15年だけの時代だってことだけはかろうじて記憶にあった。

これは私に向けられた手紙なの？

私はいつの間にかその丁寧な文章をじっと見つめていた。そしていつかのようにペン立てに手を伸ばして、あまり使う事が無く引き出しの奥に眠っていた便せんに返事を書き始めたのだった。