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深澤辰哉ちゃんと夜飯食って風呂入れよー。わら
家に入った時に届いたメッセージ。
高校の時からずっと理解ができないひらがなの「わら」をつけるこだわりに今は何だか安心すら覚える。
携帯を置いてリュックの中にしまっておいたあの封筒を取り出した。そして中を見ると二つ折りの、見覚えのある紙。
それを開くまでに少し時間がかかった。
こんな事が、本当に起こるなんて信じられなくて。
心の準備をして
泣かないでって言われたから、ぐっと目に力を入れて。
私は、彼からの手紙を開いた。
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Aちゃん。
お元気ですか?健康に過ごしていますか?
勉強をして、アルバイトをして
忙しい日々を過ごしているのかな。
あの日、急に体験したことのない大きな災害に襲われて
僕は妹と弟たちを連れて必死に逃げたんだ。
幸い、僕の家族は全員無事で
今じゃみんな立派な大人になったよ。
でも、君への手紙はもう届かなかったんだ。
何度も手紙を書いたけど、
僕の元からそれは消えなかった。
少し経ってから崩れた家の跡地に行ったんだ。
その時に、君からの手紙を見つけたんだよ。
僕の無事を願って、必死に書いてくれたであろう手紙を。
とても嬉しかった。
君が僕を思っていてくれていたのが
あの手紙から凄く伝わった。
僕はもう年老いてしまったよ。
少し病気をしてしまってね
きっとあの世に行く日も近いだろう。
でも僕は君のような素敵な女性に出会って
沢山の子供に恵まれて、楽しい人生を過ごした。
君が言っていた、洗濯機やエアコンも
この目で見る事ができた。
凄くいい人生だったよ。
あの日から今まで君のことを忘れた日は一度もなかった。ずっと君が泣いていないか、心配でたまらなかったよ。
僕が君に会うことはきっとない。
僕が君を笑顔にさせてあげることはできなかった。
でも、僕のように
君を大切に思う人にきっと出会えると思うんだ。
その人に、君の笑顔を託すよ。
君がその人と笑っている事を願うよ。
この手紙が届くことを願って。
息子には長生きしてもらわないとな。
Aちゃん
僕と沢山お話してくれてありがとう。
君の未来が素敵なものになりますように。
深澤 龍
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年1月28日 16時