・ ページ23
・
"空ってどこまでも繋がっている気がするんだ。
もしかしたら100年後のAちゃんが過ごしている時代の空と繋がっているんじゃないかって。"
聞いたこともない、想像でしかない彼の声で
あの手紙の一文が頭の中で再生される。
だんだんと強くなっていく雨。
私はそれに打たれながら空を見上げた。
リョウくん。
何で返事をくれないの。
そんな声は、灰色の空に溶けて無くなった。
100年前の今もこうして雨が降っているのかな。だとしたら、彼はちゃんと雨をしのげているのかな。
もし、彼が災害に巻き込まれて
今もどこかに身を投げ出されていたら?
こんな冷たい雨に打たれてもなお
硬く目を閉じて動かなかったら?
「リョウくん…ねぇ……返事してよ……っ」
私は降りしきる雨の中、膝から崩れ落ちた。
膝をついた先が水溜りなんてそんなの知らない。
もうとっくにびしょ濡れの体。
固まったように動かない。
雨だからだろうか、この道には誰一人おらず。力なく涙を流す私しか今この世に存在していないかのように。
雨なのか涙なのか。
私の顔を濡らすのはどっち?
「A!」
誰かが私の名前を呼ぶと同時に、降り続く雨が止んだ。
「おい!何してんだよ!A!」
「……ふっか」
傘を首元で支えて自分達を雨から守りながら、私の肩を掴んで必死に叫ぶふっかがいた。その目は今にも泣きそうで、また見たことのない彼の表情だった。
「ほら、捕まれ…家の場所教えて」
「ふっか…なんで…?」
「いいから早く帰るぞ!」
もう傘なんて役目を果たしていない。自分が濡れるのもお構いなく、私を支えて引っ張るように歩き出す。
どんどん濡れていくふっかと、既にびしょ濡れな私。体は冷え切ってるはずなのに、なぜかふっかにくっつくと私がずっと欲しかったような温かさを感じる気がして。
びしょびしょのふっかのパーカーを、できる限りの力で握った。すると彼は、もう一度私をしっかりと支え直して、もう片方の手でパーカーを掴む私の手を握った。
「あとちょっとだから…」
こっち?と聞かれるごとに頷くか首を振るかで答えていた。それを繰り返して、やっと自分のアパートが見えてくる。
それを確認したらしいふっかは私に励ましの声をかけ続けた。がんばれ、あと少し、もうすぐだよって。
冷えて硬くなったような体を必死に動かして。部屋に着いた頃には2人ともが息を上げていた。
784人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年1月28日 16時