時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ20)

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何も書けなかった便箋が机の上から消えて3日。
家に帰るとその机には何の変化も無かった。

白紙のまま届いてしまったのだろうか。
だから返事ができないのかな。

急に何も書かれていない便箋が届いて
彼は呆れてしまったのかもしれない。

もしかして、このままこの文通は終わってしまうのだろうか。書くのが辛いと言っていたのに、何も置かれていない机を見てまた涙が溢れてきて。

あぁ、最近の私は泣いてばっかりだ。

4日、5日と過ぎ去る日。
届かない手紙。

"会えるよ。そんなに、お前が想ってんなら。"

机を見るたび、ふっかのこの言葉が頭に浮かんでくるんだ。それを信じたくて、でも信じられるものがなくて。

手紙さえも届かなくなったら、もう私たちを繋ぐものは何もない。会えるわけなんかない。

「ねぇ俺ここ行ってみたいんだよね」

「……遠くない？」

「ちょっと電車乗ればいけるじゃん！てかさ、阿部ちゃんがこの間また3人で飲みたいなって言ってたんだよ。ここ阿部ちゃんの大学の方だろ？ちょうどいいじゃん」

重い体を起こして何とか毎日大学やバイトに行っている。ふっかは相変わらずいつも通りに隣に座ってきて、飯行こうだのノート見せてだの話しかけてくる。

あの時の少し変だったふっかの様子は無かったかのように、相変わらずヘラヘラして。

「ふっかの奢りならいいかなぁ」

「お前相変わらずたかるな？」

「最近金欠なんですよ」

「お前んとこの給料低いの？」

「ふっかのゲーセンよりは高いと思う」

「ゲーセン店員舐めんな？」

そんな会話をしながら授業が始まるのを待っていた。一通りふっかと言い合ってからふと携帯を見る。何となーくネットニュースを見ていると、私はあるトピックスが目に止まった。

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【あの大災害から明日で100年】

死者およそ○万○千人。うち東京は○万人。
史上最大規模の被害をもたらし
多くの人々が犠牲になった。

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「明日で…100年？」

100年。いつの間にか見慣れていた数字だった。
100年前に起きた大きな災害。

ちょうど100年前 ────────

「A…？」

「伝えなきゃ……」

「え？」

「大変…リョウくんがっ……」

私は教室を飛び出した。
授業中で静かな大学内に大きな足音を響かせて。

無我夢中で走った。

息が苦しくても
足を止める事なくひたすら走った。