時を超えて、私の涙を拭う手は。 (ページ16)

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そのレポートっていうのは無事に終わった？
2000字も書くなんて僕には考えられないよ。
Aちゃんは文章を書くのが上手なんだね。
でもAちゃんに向けた手紙なら
僕も何文字でも書ける気がするよ。

今日僕はさっきまで星を見ていたよ
凄く綺麗に見えたんだ。

空ってどこまでも繋がっている気がするんだ
もしかしたら100年後のAちゃんが過ごしている時代の空と繋がっているんじゃないかって。

Aちゃんに会いたくなったよ。
君はどんな姿をしていて、どんな声で話すのかな。

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机の上に届いていた手紙を読んで
私は思いが止められなくなるようで怖かった。

リョウくんの言葉は相変わらずとても綺麗で優しい。
温かくて美しい。

この手紙を、彼はどんな思いで書いたのだろう。
彼が見た星空はどんなものだったのだろう。

思わずカーテンを開けて空を見上げた。
そこには無数の星がある。

リョウくん、本当に繋がっているのかもしれないね。でも私たちがお互いに姿を見ることはできない。なぜだろうね、こんなにも沢山言葉を交わしているのに。

「っ……」

いつものように机に座って便せんを取り出した。でもボールペンを持つ手は動かなくて、その代わり視界がぼやけてくる。いつもとは違う真っ白な便箋に、ひと粒涙が落ちた。

なぜだ、書けない。手が石になったように動かなくて。ぽつ、ぽつと零れる涙で便箋が濡れていく。

100年の距離が憎い。何で私はこの時代に生まれたんだ。

悔やんでも悔やんでもどうしようもない事ばかり。私はとうとうボールペンを置いた。

その後、私がどんな行動をしたのかは覚えていない。

翌朝目が覚めた私はちゃんと部屋着に着替えていてメイクも落としていて、ベッドの上で体には布団が。窓の方を見るとバイトのエプロンとシャツはしっかりハンガーにかけられている。

回らない頭で必死に昨夜の事を思い出しながら朝の支度を始めた私が見たのは、何も書いてない真っ白な便箋が無くなっている、何も置かれていない机だった。