ラブシチュエーション！

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「ちなみにAちゃんはどの業界志望してるの？」


その後も彼の文章を見て色々と助言をしたりしていると、いつの間にか私の話に。


「んー、事務職で広く受けてる」

「へぇ、意外」

「そう？」


何となく大学生をしてきて、いよいよ就職活動ってなった今年。正直就きたい職種だったりやりたい事なんてものは浮かばなくて。タイピングは得意だしなぁなんて簡単な理由で事務職をとりあえずたくさん受けていた。

まぁ、一社も取ってくれてないんだけど。


「うん。Aちゃんさ、すごく文章まとめるのうまいしゼミでプレゼンした時の企画書とかも凄く分かりやすいからさ。しかもデザインも見やすくて。だから広告とかデザイン系なのかなぁって勝手に思ってた」

「広告…デザイン……？」

「俺凄く向いてると思うなぁ。あ、俺のイメージだからあまり気にしなくていんだけどね？」


考えたこともなかった。でも思えば文章や作成した資料のデザインはゼミでも褒められてたかもしれない。ただ課題だからって言われるがままやってたからあまり意識した事はなかった。


「嫌じゃなかったらES見せてよ！」

「あ、うん」


一応保存しておいた今までの企業への文章をラウールくんに見せた。真剣に見てるその横顔がすごく綺麗だなぁなんて。


「ほら…やっぱ凄いもん」

「え？」

「めちゃくちゃ読みやすいし分かりやすい。俺が口出す所なんてないくらい」

「気使わなくて良いよ？」

「ううん、ほんと」


こことかさ、って画面を指差してこう言うところがすごいと思うって具合的に教えてくれるラウールくん。お祈り続きでやられてたメンタルが少しだけ回復した気がした。



「広告、デザイン系…っと」


次の日から、私は事務職でしか検索していなかった就活サイトにそんなキーワードを入れて検索をするようになっていた。

今まで全く興味がなかったのに調べていくと楽しそうだなとか、やりがいがありそうだなとか。今までの企業には一ミリも思わなかった気持ちがどんどん湧いてくる。


いくつかの企業にエントリー、そして履歴書やESを書く。たくさんしてきた事なのに、今までとはモチベーションがかなり違った。とんとん拍子に選考が進み、最終選考まで残ることもかなり増えたのだ。


「あ、Aちゃん履歴書見てくれない？」


そして、ゼミ終わりや講義の空き時間にラウールくんと就活の話をする機会も増えていったのだった。

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