・ ページ11
・
阿部さんは安心したように笑って、ニコニコのままコーヒーを一口。落ち着いた雰囲気から歳上と言われても疑わないし、でもこんな風に顔を輝かせてるのを見ると歳下と言われても疑わないな。
「僕ここの人っていうわけじゃないから本当に知り合いがいなくて。舘さんくらいしか話せる人がいないんですよね、だから同い年でまた来てくれたってだけでちょっと親近感湧いちゃった。笑」
「私もまぁ…さすがに当時の友達なんかは覚えてないしきっとみんな都会に出たと思うし……」
「たまーに海の方で子供たちが遊んでるの見ると、この子たちも大人になったらいなくなっちゃうのかなーって思います」
「中々残る人っていないですからね」
「僕みたいな人もいるのに」
「ふふ、チャレンジャーですね」
何だか少し笑ってしまって、その私の様子を見た阿部さんがそうかなぁって照れながらはにかむ。
「でも凄くいい町じゃないですか、舘さんなんかここにゆかりなんて一切ないのに着いてきてくれて。今じゃ気に入ったって言ってくれるんです」
「舘さんってさっきの?」
「あ、そうそう。宮舘だから舘さん。高校の時なんか舘様って呼ばれてましたよ。なんか、雰囲気がロイヤルで貴族みたいだから」
「だてさま…」
「ふふ、呼びたくなりますよね」
私に会釈してくれた姿を思い出して確かにしっくりくるかもしれないと思う。そんな彼はキッチンでお皿を洗っているようだった。
「Aさんは何で戻ってきたいって思ったんですか?」
「えっと…生まれ育った町っていうのもありますけど、海がすごく好きで。小さい頃しょっちゅう海を見に来て眺めてたんです。なんかそれが忘れられなくて……」
「いやほんとここの海綺麗ですよね!僕もここに来るたび行ってました。我ながらいいところにここ建てたな〜って」
椅子をくるっと回してベランダ席の方に体を向けた阿部さん。少しだけ見える海を眺めて穏やかに言う。
「常連さんになってくれますか?」
「え?」
「色々な海が見えますよ。僕Aさんと仲良くなりたいです」
阿部さんはベランダの方から目線を外してこちらに向けた。
「……私でよければ」
「やった、嬉しい」
照れたように笑った表情が何だか可愛らしくて、素直に仲良くなりたいと言った彼に私もそうなりたいなって自然と思った。
ここに戻ってきてできた初めてのお友達は
オシャレなカフェの店員さんでした。
999人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - お風呂場の狸さん» いつもコメントありがとうございます!また泣かせちゃった…(笑)お楽しみいただけたようで嬉しいです。寒くなってきてお仕事だとか、朝起きるのも億劫な季節ですよね。お互いに頑張りましょうね( ; ; )こちらこそありがとうございます! (2021年12月19日 16時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
お風呂場の狸(プロフ) - めちゃめちゃ泣きながら読んでいま全てを踏まえて読み返してます……ほんとに天才です最高です……今日も6時半起きで仕事なのに一気読みしちゃいました……!今週一週間も頑張れそう(;-;)とても面白かったです!ありがとうごさいます!!! (2021年12月13日 2時) (レス) @page17 id: 0d3b8981e3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - aggyさん» お読みいただきありがとうございます!どうなるんですかねにやにや(笑)駆け足になりますが彼らを見届けてくださいね!コメントありがとうございます(^^) (2021年11月29日 1時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - コメント失礼致します!いつもお話拝見させて頂いてます。今回のお話、読んでてニヤニヤしちゃいます笑笑今後の展開楽しみにしてます! (2021年11月27日 20時) (レス) @page50 id: 4fbf4fb7f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年11月26日 11時