魔法使いと恋心

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「おつかれふっか」

「おつかれ。あのファンカストさん？」

「あ、どうも。佐久間って言います」

「どーも、ゴンドラキャストの深澤でぇす」


深澤。だからふっかなんだ。
深澤さんはじゃあ隣失礼して、と腰かけると俺が持っていた缶ジュースを見て「阿部ちゃん、俺にジュースは？」と笑う。「自分で買え」とあしらった阿部さんを見て仲がいいんだなって。


「どうしたの？2人でお話なんて」

「んー？今佐久間くんの恋愛相談受けてる」

「ブッ！！」

「あー、A？あいつ結構奥手だかんね」

「えっ、知って…？」

「なんで知ってるかって？そりゃあ分かるよ。笑」

「ほらね？俺もふっかも応援してるんだって。笑」


思わずジュースを吹いてしまった俺に2人はニコニコして畳みかける。はっずー……何で俺は初めてちゃんと話す相手に恋心がバレているんだ。


「でも斬新なアプローチ方法だよね。ナンパネタで絡みに行くって」

「A、小悪魔ナルミさんって呼ばれてんでしょ？最初聞いた時びっくりしたわ。笑」

「い、いやぁ……あれはネタだから…アプローチっていうわけでも…」

「でもご飯とかパーク外でも会ってはいるんでしょ？いいじゃん。Aちゃんと佐久間くんお似合いだと思うし」

「次会う予定ねーの？」

「あ、このあと……」

「え！まじ！？ご飯行くとか？」

「いや、単に一緒に帰るだけっていうか…色々あって…」


そう、色々あったんだ。2人がどこまで知ってるのかは分からないけど色々あったんだ。色々。


「デート誘いなよ。帰り際に一緒に遊びに行こーってさりげなく言えばいいじゃん」

「ま、まじぃ？そんないきなり誘っていいもん？」

「あいつ夜に俺の船乗りたいって言ってたなー」

「え？」

「あ、そうそう。俺のプレショーちゃんと見たいって言ってた」

「……えぇ」

「ふふ、勇気出しな？Aちゃんってパーク大好きなんだよ。同僚からのアドバイス」


阿部さんと深澤さんはそう言って席を立って去ろうとする。慌てて俺も席を立って「あ、ありがと！」と言うとにっこり笑ってくれて。


「あ…あべちゃん、ふっか…？」

「ふふ、頑張れ佐久間！」


彼女も呼んでいた2人の愛称を口にした。俺の事を呼び捨てで呼んだ阿部ちゃんと手をあげて答えたふっかに、俺はこれからも絡みに行こうとその背中を見て思った。

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