ようこそ、ご相談ですか？4

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そんなガヤガヤしている中、蓮くんの声に集中してなるべく周りの心の声を拾わないように歩いていた。声に出して会話しているのと心の声が混ざってごちゃごちゃだ。阿部さんの遮断できる力が羨ましい。

というか阿部さんが近くにいてくれたら心に直で語り掛けてくれるから楽なのかなと思ったけど。その前に私にはもう阿部さんの心は聞こえない。今朝も彼をじっと見つめてみたけれど全く聞こえなかった。

阿部さんも戸惑っていた。間違いなくオンにしてるし私の声はちゃんと聞こえてるらしい。けど自分の声が届かない。一度届く事を経験してしまった以上、それが無くなってしまった時の不安はすごかった。



たった一人の、同じ人なのに。




(…ゆ……い…あ……な……)




ん？今なんか……

ずっとガヤガヤしてる頭の中で聞こえてきた声。その声は途切れ途切れだったけど妙に大きく頭に流れてきた。どこかで聞いたことあるような…ないような……


“阿部さんどこにいますか？”

“後ろにいるよ”

“今なんか聞こえませんでした？”

“なんか？ずっと周りの声は聞こえてるけど”



阿部さんに確認してみたけど異変は感じてないらしい。じゃあ私だけ…？途切れてるのにそれが妙にはっきり聞こえるなんてあまりない。



“なんか聞こえたの？”

“いや、聞こえてはないんですけど…”


周りを見回してみてもただ歩く人がたくさんいるだけ。気のだろうか……


“気のせいかもしれないです”

“ほんと？”

“人が多いので……”


あまり気にしても変に思われるだろうからとりあえず気にしないことにした。けどトーク画面を閉じて携帯をしまおうとする時に電話が。


「あ、ごめん蓮くん。事務所の人」

「うん」


電話の主は阿部さん、心配してくれたのだろうか。蓮くんに少し待ってもらうように言って少しだけ離れる。


『もしもし、Aちゃん大丈夫？』

「はい、とりあえず」

『何か聞こえた？』

「いや、何かっていうか…不自然だなって」

『不自然？』

「はっきり聞こえるのにその声が途切れてるっていう…普通遠くにいるなら聞き取りづらいじゃないですか。でもまわりの声に混ざらないでその途切れる声がちゃんと聞こえた気がして」

『聞き覚えはあるの？』

「いや…それも判別できないくらい……」

『そっか…今のところ不審な人物は見つからない。後ろに佐久間と俺いるから何かあったら教えてね』

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