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「どうぞー」
「さんきゅ」
何だかんだで深澤さん以外の方のコーヒーを淹れた私はデスクに戻る。特にやることもないけどパソコンを開いてみると先程作った資料に誤字を見つけた。
印刷する前に見つけてよかったと思ってその誤字を直そうとすると置いていたカップに肘が当たってすこーしだけ中身が溢れてしまう。
おっといけない、とカバンの中からティッシュを探す。けど入ってるはずのティッシュは見つからず、結局この間佐久間さんとつくったティッシュを一つ拝借した。
「Aちゃん」
拭いたティッシュをゴミ箱に捨てようと立ち上がった時、阿部さんに声をかけられる。
「ん?何ですか?」
「ちょっと手伝ってちょうだい」
阿部さんはパソコンを持ってローテーブルに座る。ティッシュをぽいっと捨ててそこに向かうと、パソコンには何も表示されておらずデスクトップ画面が見えるだけ。
「何するんですか?」
「事情聴取」
「え?」
「Aちゃん、何か隠してるでしょ」
阿部さんは小声でそう言った。
「みんなに聞かれたくないことなのかなと思って。あっちだと心で話しても佐久間にまた秘密の会話してるーとか言われちゃうでしょ。言いたくないことなら無理に言わなくてもいいけど、なんか元気ないから心配になっちゃった」
阿部さんは苦笑いだった。読めるはずなのに私が言わないから読まないでくれてたんだな。それに心配もさせている。元気ないように見えるのか、いつも通りにしてたつもりだけど。
「元気ないですかね?」
「俺にはそう見えた」
「うーん、元気ですけどねぇ」
「じゃあ俺と目合わせてよーなんか今日すぐ晒される気がするー」
やはりそれはバレていたらしい。
心が読めるという謎の力を持った私たち。でもその力が何なのかどういう性質なのかなんてのはお互いに未知で。
阿部さんの声が聞き取りづらい。
聞こえなくなりそうで怖い。
そんなことを言ったって困らせるのは分かってること。
「俺Aちゃんとの秘密の会話するの好きなのになー」
少しおどけてそう言う阿部さん。私はその会話ができなくなってしまう気がしてならない、怖い。
「……私もです」
カラン
聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた時、事務所のドアのベルが鳴る。
「あ、こんにちはー!」
「えっ…」
佐久間さんが明るく出迎えたお客さんは、思いもよらぬあの人だった。
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ぽぷら(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございます!うふふ、色々考えてみて下さい。笑 ぜひお楽しみいただければ! (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - きさん» はじめまして!コメントありがとうございます!えぇ!一気に!とても嬉しいです…!引き続き更新していきますのでぜひ楽しんでいただけると嬉しいです(^^)ありゃ!だめでしたか!笑 いつか読めるようになるまで練習ですね(?) (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - ドキドキ。二人で喫茶店に行ったタイミングでの訪問なんて、、読めない理由も含めていろいろ考えちゃいます(笑) (2021年8月25日 4時) (レス) id: 978894b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - ぽぷらさん初めまして!ふらっとタイトルだけみて立ち寄ったのですが、最新話まで一気に読んでしまいました、、!これからの展開すごくワクワクしてます!私も人の心読めないかなって思ってお母さん見たけどだめでした(?)マロ送れなかったのでここで失礼します! (2021年8月24日 21時) (レス) id: 173fd97868 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - やこぴよ、さん» コメントありがとうございます!幸せホルモン!私のお話で満たしてくださったのなら本当に嬉しいですー!きっと2人でニコニコしながらティッシュ詰めたことでしょう(笑)お気遣いもありがとうございます! (2021年8月23日 20時) (レス) id: 786016fd9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年8月14日 1時