ようこそ、ご相談ですか？3

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デスクに座って書類の整理をしてると前の方から視線を感じる。顔を上げると阿部さんがこちらを見ていて目が合った。



(い…なぁ俺もプレ…トもら…たい)



いやこのくらいなら明日にでもあげるけど。

阿部さんはニコニコしている。最近はこうやって冗談を言ったり少しいじったりと阿部さんは何でもないことを心で話しかけたりしてくる。

仲良くなれた気がして嬉しいのだけど、私は最近少し違和感を感じていて。


(阿部さんは甘いもの好きですか？)

(んー、ふ…う…かな)

(普通、ですか？)

(うん)



阿部さんの心の声が聞き取りづらいのだ。今みたいに途切れ途切れだったり、ノイズが入るように聞こえたり。まだ聞き取れるレベルだから返せてはいるものの、多分少し離れてたら聞こえない。

阿部さんと心で話すのは安心できて好き。でもそんな安心する会話が聞き取りづらい。何だか不安になっていた。

だって、まるで蓮くんみたいだから。蓮くんはこんな状態が続いたのちに全く聞こえなくなったんだから。蓮くんみたいに阿部さんの声が聞こえなくなるかもしれない。そんな気がして怖かった。


「あ、そうだ。深澤さーん」

「んー？」

「この書類ってこれで大丈夫ですか？」

「うん、おっけおっけ。しかし見やすいね、俺なんかよりパソコン作業向いてるわ」

「数ヶ月前までレポートやら卒論やら書きまくってましたからね」

「若いっていいなぁ、俺ももっかい学生したい」



心で話し続けるのが怖くて、深澤さんに書類の確認をするふりして席を立った。

その後も事務作業に集中してなるべく話しかけづらいであろう雰囲気を作っていた。別に急いでやることもないし、むしろすぐ終わることばかりなんだけど。

これが終わったらおつかいでも行こうかな。あ、でも1人で外出れないんだった。


「佐久間さん」

「んー？」

「暇ですよね？」

「んふふ、読んだなー。笑」


暇だなぁと心で呟きながらデスクに飾ってる通称"嫁"を眺めている隣の人に話しかける。


「おつかい行きたいんですけど着いてきてもらっていいですか？」

「いいよー、お菓子欲しい」

「この前深澤さんにお菓子は経費だめって言われましたよ」

「大丈夫大丈夫バレないから」

「聞こえてっぞー佐久間の給料引くからな」



ごめんなさい阿部さん。目線を感じるけど気づかないふりさせて下さい。

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