ようこそ、ご相談ですか？3

・ ページ32

・


「その時凄く嬉しくてさ。大丈夫？って心配されてるんだけど…阿部ちゃんから話しかけてくれたのが初めてだったからそれで元気になっちゃった」

「……読んだからですよね？」

「うん、そうだと思う。当時は隠しきれてなかったのかなって思ってたけど周りは一切気づいてなかったからね。その時なの、心が読めるって教えてくれた日」


佐久間さんは携帯を取り出して、制服姿でピースをしてる阿部さんとの写真を見せてくれた。これは卒業するちょっと前の写真だからもうめちゃくちゃ仲良しって嬉しそうに言う。


「ごめんねって言われたの。読めちゃうんだって、だから心配になったって、気味悪いよねって。でも俺はそんなのどうでもよかったの。だって心配して話しかけてくれたのは事実じゃん。読めても気づかないフリだってできるでしょ？だから嬉しかった。それにこうやって人の本当の気持ちを読んで助けられる力があるってことでしょ？スッゲーかっこいいと思ってさ」


"佐久間なんか、すげー！かっこいいー！とかさ。それは意味わかんなかったけど。笑"


嬉しそうに言っていた阿部さんの姿を思い出す。そりゃあこんなこと言われたら嬉しいだろう。私だってこんなことを周りに言ったら気味悪がられるだろうし嫌われるだろうしとしか思ってなかった。現にここの人達以外には言う勇気なんてない。一生無い。


「だから俺そう言ったの。そしたら笑ってくれてさ、初めて阿部ちゃんが笑ってる所見たから……俺阿部ちゃんをもっと笑わせてあげたいって思ったんだよね。阿部ちゃんの喜んでる所もっと見たいなーって」

「阿部さん、沢山笑ってますよ」

「ね、だから俺阿部ちゃんが笑ってんの見ると今もめっちゃ嬉しいの」


佐久間さんは写真フォルダーをスクロールしてあ、これはね！と楽しそうにその時の出来事を教えてくれる。

そういえば阿部さんともこんな時間を過ごしたな。写真見せながら楽しそうに話す彼を見る時間。ここまで全く同じことをやってるこの2人に微笑ましくなった。


「初めてのお仕事の時の事覚えてる？」


しばらく2人のエピソードを聞いていて、少し沈黙ができたと思ったらそんなことを聞かれる。


「私の大学に行った…」

「うん、俺らみんなより先に2人でここ戻ってきたよね」


あの日の事を思い出す。何だか気分が悪くてこのソファーでぐったりしていたのを、佐久間さんが声をかけてくれていたんだ。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す