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バタンと扉が閉まるとここは本当にバーの中なのかと疑うほど暗くて無機質な廊下。
いくつかドアが見えてここから外に出るようなルートがなければ佐久間さんも阿部さんもこのどこかの部屋にいるはず。
「着いてきな」
高圧的な男の声に恐怖を感じながらも素直に従って着いていく。
(阿部さんどこですか!いますよね!)
廊下を進みながらもし聞こえればと心の中で阿部さんを呼ぶ。私の心の声がどの距離から聞こえるのかは分からないけど、どこかしらの部屋の中にいるならそのドア付近に行けば聞こえるはずだ。
(阿部さん…どこ?佐久間さんは?)
一つ、二つ、とドアを通り過ぎても何も聞こえなくて。自分から発していた心からの声はいつのまにかただの恐怖心の声になっていた。
(阿部さぁん…どこ…)
結局求めていた声は聞こえないまま、一番奥まで進んで行き止まり。その左にあるドアに男は手をかける。
(阿部さん!一番奥の部屋にいます!)
どうにか聞こえててくれと私が心の中で必死に叫んだ瞬間、男はドアを開けて反対の手で私の手首をグッと引っ張る。私はその部屋に乱暴に押し込まれ、バランスを崩して床に手をついてしまう。
「お嬢さん何者だ?ここに乗り込むような真似してる割にずいぶん弱っちい面してんじゃねえか」
男は不気味な笑みを浮かべながら私を見下ろす。思わず後ずさるけどじりじりと寄ってくる男に壁まで迫られてしまう。
「あの仲間は捕まったぞ?可哀想になぁ、女だけ取り残されて」
仲間。それは佐久間さんだろうか、阿部さんだろうか。どちらにしても捕まっただなんて私の中では不安材料でしかない情報だ。震える手を必死に握りしめ、ただその恐怖に耐えていた。
「何が目的だ?」
「知らない…」
「口答えして困るのはお嬢さんだぜ?あの仲間と同じになってもいいのか?」
2人のどちらかが何かをされている…?どちらかじゃなくどっちもだったら?
最悪のパターンが頭に思い浮かんで恐怖で埋め尽くされる。恐ろしいほどに何も聞こえなくて、聞こえるのは恐怖のあまりに上がる私の息づかいだけだった。
「殺しやしねぇよ、ただちょっと眠ってもらうだけだ」
男がゆっくりとしゃがんで私の首を片手で掴む。ニヤッと笑った男はその手に少し力を込めた。息苦しさと恐怖で涙が出そうになる。
あぁ、もう、だめ……?
「それは困るなぁ、うちのお姫様を眠らせないでくれる?」
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ぽぷら(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございます!うふふ、色々考えてみて下さい。笑 ぜひお楽しみいただければ! (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - きさん» はじめまして!コメントありがとうございます!えぇ!一気に!とても嬉しいです…!引き続き更新していきますのでぜひ楽しんでいただけると嬉しいです(^^)ありゃ!だめでしたか!笑 いつか読めるようになるまで練習ですね(?) (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - ドキドキ。二人で喫茶店に行ったタイミングでの訪問なんて、、読めない理由も含めていろいろ考えちゃいます(笑) (2021年8月25日 4時) (レス) id: 978894b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - ぽぷらさん初めまして!ふらっとタイトルだけみて立ち寄ったのですが、最新話まで一気に読んでしまいました、、!これからの展開すごくワクワクしてます!私も人の心読めないかなって思ってお母さん見たけどだめでした(?)マロ送れなかったのでここで失礼します! (2021年8月24日 21時) (レス) id: 173fd97868 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - やこぴよ、さん» コメントありがとうございます!幸せホルモン!私のお話で満たしてくださったのなら本当に嬉しいですー!きっと2人でニコニコしながらティッシュ詰めたことでしょう(笑)お気遣いもありがとうございます! (2021年8月23日 20時) (レス) id: 786016fd9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年8月14日 1時