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「いらっしゃいませ。何になさいますか」
バーテンダーが阿部さんに話しかける。
明らかに普通の客ではなかったあの男。その言った通りにすればいいのではないかと自分なりの賭けに出た。
(スティンガーを一つ)
「…スティンガーを一つ」
「お食事は?」
(要りません)
「要りません」
合ってるか…?
バーテンダーの様子をまたカクテルを飲むふりしてこっそり伺う。何度目かのアルコールの強い香りに顔が歪みそうになるのをまた必死に押さえ込んだ。
「お待たせしました」
バーテンダーが出したのはカクテルと一枚の紙切れ。さっきの男のは少し離れてて見えなかったけど、その紙切れには4桁の数字が書かれていた。
よかった、きっと正解だ。
(さっきの男はそのカクテルと紙を持ってあっちの扉に入って行きました。たぶん佐久間さんもあの中にいます)
(了解、ありがと)
阿部さんは立ち上がると同時に私の頭をサラッと撫でる。思わず見上げると何だかまた不敵な色気のある笑みで私を見下ろしていた。
(阿部さん…?)
(Aちゃん顔赤い、無理しないでね)
心では優しくて安心するいつもの阿部さん。佐久間さんが戻ってこないのも合わせて、あの扉に向かうであろう事を考えて少し寂しくなる。
その通りあの扉に向かった阿部さんの後ろ姿をまたカクテルを飲みながらこっそり目で追いかけた。
学習しないな、私。
赤いらしい自分の顔、アルコールが回ってきたか…?ジュース同然のカシスソーダとこれしか飲んでないのに。
それから少し経っても佐久間さんは戻ってこなかった。少しずつ不安になっていく心からか、きついはずのカクテルをどんどん口に運ぶ私。
「お嬢さん、ちょっといいかい」
二杯目も半分を切った頃、知らない声が耳に入る。振り向くとストライプのスーツを着た40代くらいの男がいた。
嫌な予感。
「……何ですか?」
「ちょっと来てもらおうか」
グっと腕を掴まれて着いてこいと威圧的な目で脅される。これは嫌な予感でしかしない。佐久間さんが戻ってこない事に関係があるのだろうか。
抵抗する力もなければそんな事したらヤバいのも分かるので素直に従って男についていく。
男があの扉に手をかけて開いた先。そこは思ったよりも長く続く暗い廊下だった。
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ぽぷら(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございます!うふふ、色々考えてみて下さい。笑 ぜひお楽しみいただければ! (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - きさん» はじめまして!コメントありがとうございます!えぇ!一気に!とても嬉しいです…!引き続き更新していきますのでぜひ楽しんでいただけると嬉しいです(^^)ありゃ!だめでしたか!笑 いつか読めるようになるまで練習ですね(?) (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - ドキドキ。二人で喫茶店に行ったタイミングでの訪問なんて、、読めない理由も含めていろいろ考えちゃいます(笑) (2021年8月25日 4時) (レス) id: 978894b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - ぽぷらさん初めまして!ふらっとタイトルだけみて立ち寄ったのですが、最新話まで一気に読んでしまいました、、!これからの展開すごくワクワクしてます!私も人の心読めないかなって思ってお母さん見たけどだめでした(?)マロ送れなかったのでここで失礼します! (2021年8月24日 21時) (レス) id: 173fd97868 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - やこぴよ、さん» コメントありがとうございます!幸せホルモン!私のお話で満たしてくださったのなら本当に嬉しいですー!きっと2人でニコニコしながらティッシュ詰めたことでしょう(笑)お気遣いもありがとうございます! (2021年8月23日 20時) (レス) id: 786016fd9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年8月14日 1時